線路の楽しさ
坊主岩に入ってくる運材列車
2021年のair軽便鉄道模型祭では、公式ポスターについて裏話を幾つか投稿しましたが、twitterの文字数などの制約もあって十分に展開しきれなかった話題がまだ残っています。そこで、これから何回か、
過去の軽便祭ポスターに使用された画像に関する話題を披露することにしましょう。
まず、第5回の木曽森林鉄道(右)。原画は、5トン機関車がウグイ川線の坊主岩に運材列車を牽いて降りてくるところで、
1975年秋に、けむりプロの井上一郎が撮影したもの。加工されていない画像は、南軽出版局の『助六』76ページに掲載されています。
ヒノキの原木を積んだ貨車のくねり具合が何とも言えない瞬間ですが、直前のカット(下)では、急勾配のSカーブを下っている様子は分かるものの、ポスターに使われた
写真のような「くねった」感じが見られません。
助六から下ってきた列車が坊主岩に入るところの線路は、最後のSカーブが急勾配の上に大きなカントが付けられているので、ここを通過するときに
とりわけ運んでいるヒノキが「ねじれた」ような格好になるのです。
左下の写真は、ちょうど列車が走っているあたりから坊主岩の停車場を見たところですが、右の線路の様子を見てください。
ウグイ川線の助六~坊主岩間には見どころが何か所もありますが、これほどの急勾配・急カーブ・大きなカントが
揃っている場所は、他には無かったようです。
ここを運材列車が下る写真は珍しく、私たちは他に見たことがありません。
構内の一番どんづまりの地点に半径10mのヘアピンカーブを含むPラインがあるので、たいていは
そちらを狙いたくなってしまいます。実は、撮影者も最初は奥のヘアピンで列車を待とうと考えていました。
ところが、持っていたレンズではどうしてもカーブを回る列車を巧く収めることが出来そうにない。そこで、ヘアピンの方は同行者に任せて、
こちらで列車を待ったのだそうです。
このときは、運材の後から続行で機関車がもう1輌、追いかけてきていました(右写真)。坊主岩に空車の運材台車が多数置いてあり、
それを助六へ引き上げるために5トン機が2輌必要だったのです。
運材列車がヘアピンを回る様子、5トン機が空車2編成を牽いて続行で助六へ戻る様子、坊主岩の構内図、助六からの荷を2編成分連結して10トン機が引き継ぎ大鹿へ下る様子などは
『助六』76-77ページ、81ページ、104-105ページをご覧ください。同書には、ウグイ川線の線路規格や運行についての
解説、ダイヤも収録されており、在りし日のウグイ川線の全体像を生き生きと蘇らせるものとなっています。
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