線路の楽しさ

      

きついけど回れます


 助六のリバース線はモーターカー専用ですが、ウグイ川線には本線上にも1箇所リバース(P字型の線)が設けられていました。

 ウグイ川線は坊主岩まで王滝本線と同じ機関車が入ります。ここから先はカーブや路盤など線路の規格が低いので列車を分割して小さい機関車で牽引するのですが、構内のはずれにとんでもない急カーブがありました。地形的にここで折り返さないと谷の奥に上がれない事情があったのでしょうが、現場を見た鉄道ファンは皆「えっ?ここ材木を積んで曲がれるの?」と思ったはずです。

 右=空の運材台車を助六に引き上げる 左=下りは5車 1976年 2枚とも撮影=箱庭亭正助

 しかし、ここを通り抜けないと、助六に向かって進むことはできません。そして、この猛烈なカーブがリバース線の一部になっているという、なかなかおもしろい線路配置になっていたのです。坊主岩の構内図は南軽出版局の最新刊『助六 木曽森林鉄道鯎川線』に載っていますので、関心のある方はそちらをご覧ください。

正面の数字「6」は制限時速。右下に「R=16」の
曲線票が立っている 1973年 撮影=かねた一郎

 さて、曲線半径はいくつだったかというと、左写真の曲線票では16mということになっています。この場所で別の時期に反対側から撮影された写真にR=10という数字が見えるものがあるので、いちばんきつい部分は10mだったのかもしれません。制限速度は6km。そろそろと人間の歩く程度のスピードで回る。いまなら模型でもDCCでその感じを表現できそうですね。
 森林鉄道には、しばしば半径10m前後のカーブがあるのですが、そういう箇所では丸太の長さも短くしています。ここは長さ5mのヒノキの丸太を積んだ列車がそのまま通過していたというのが凄い。写真から推定すると、連結棒でつながれた台車の中心間は4mより短いようです。

 なお、客を乗せて営業している軽便鉄道の場合、地方鉄道法で軌間2フィート6インチなら最小曲線は40mと定められていました。実際には、もう少しきついカーブをこっそり通していた例(笑)もあるかもしれませんが。
 普通の鉄道ではありえない、こんな急曲線をときには人を乗せた客車を牽いて曲がっていくというのは、森林鉄道ならではの光景です。

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