線路の楽しさ

      

阿里山の大崩落地帯

二万平から下る列車が、第二分道、第一分道と2つのスイッチバックを経由した後、平遮那に至る区間に大崩落地帯があります。ここは二万平から300m近く下ったあたりで、 建設時から度々線路が流されることが相次いだ地点。
 「けむりプロ」のメンバーは1966年の初訪問時に、ここで多数の写真を撮影しているのですが、写真集『阿里山森林鉄道1966-1968』では ごく一部しか掲載できませんでした。下は『鉄道讃歌』129ページに載っているものと同じ場所、崩落地帯の上から見下ろしたところです。 ご覧のように、列車の向こう側は谷底まで一直線に落ち込んでいる凄いところです。

 屏遮那から第一分道に向かって推進で登る 1966年 撮影=杉行夫

上の写真ではよく見えていない線路状態が分かるのが、下の2枚。「こんなところに鉄道を敷けるのか」と思う光景ですが、100年以上前に開通して以来、災害で不通になった時以外はちゃんと走っていたのです。
 台湾の地形は、日本と比べてずっと山がちで、3000mを越す山が100以上もあります。ここは標高約1700mですから、志賀高原とか八方尾根、蔵王のスキー場くらいの高さのところに線路が敷かれているわけです。 そして、この鉄道の目的である森林資源についていえば、ヒノキはもっと高いところにしか生えていません。そう考えると、貴重な木材を手に入れるため、こんな厳しい地形に線路を通したのも 無理からぬことなのだなあと思えてきます。

 左)線路下の崖の土留めは、どうやって工事をしたのだろうか 1966年 撮影=井上一郎 (右)落石も多そうだ 撮影=杉行夫

現在、嘉儀から阿里山へ延びる18号公路をクルマで登って行くと、これほどたいへんな地形を克服していくという印象がありません。 不通区間の復旧作業が完了したら、阿里山に行かれる方は是非、鉄道を利用してこの景観に接していただきたいと思います。 なお、この崩落地を含む前後の様子を500mも高いところにある塔山線から見下ろした写真が、『阿里山森林鉄道1966-1968』18-19pに掲載されています。

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