ストラクチャーの魅力
神木駅 今昔
阿里山の象徴とも言われた神木が半分倒壊し、ついに伐り倒された話は以前に取り上げましたが、 この駅の線路配置は50年前とあまり変わらず、駅を出て分岐してからの勾配も変わっていないようです。ただ、二万平~屏遮那間の崖崩れのため 鉄道は寸断され、嘉儀から奮起湖または十字路までと、神木から阿里山までの区間が別々に運行されています。復旧作業はかなり進んでいるようですが、 現時点で全線の営業運転は再開されていません。右下の写真で、左に登って行くのが列車の走っている阿里山方、 右に下るのが不通区間の奮起湖方面です。
50年前に「けむりプロ」が訪れたころは構内に2本の線路があり、ときおり列車交換が行われていました。『阿里山森林鉄道1966-1968』の26-27ページに 当時の線路の様子が分かる写真があるので、関心のある方はそちらをご覧ください。今では下の写真のように2本のうち右側の線路は途中で塞がれていて この線路の奥の部分は現在ホームと遊歩道になっています。なお、神木駅は多数の観光客が立ち寄るため、駅以外の線路わきに立ち入ることはできません。 そのため、昔と同じ位置で撮影し対比することはできないのですが、遊歩道が整備されているので列車を特定の角度から撮ることは可能です。 この写真の一番下に写っている柵の内側には1998年に伐倒された神木が横たわっています。
50年間に駅の周辺の樹木の様子はいろいろと変わりました。枯れたり倒れたりした大木がある一方で、成長した樹木によって見通しが悪くなった箇所もあります。
上の写真で機関車の背後には整った林が見えますが、50年前はそこに枯れた巨木があり、周囲の樹々はまだ大きく成長していませんでした。
いちばん上の左写真で神木の向かい側に見えている白いものが駅名標。右写真は
そこで撮影されたものですが、朽ちかけた巨木の幹の彼方に塔山の大尾根が見え、しかも中腹に白煙を上げて列車が走っている姿が写っています。
現在では、神木駅の線路わきからはこの景色を見ることはできません。
この当時はあちこちから断崖に築かれた線路が見えたようですが、50年間に樹木が成長し、神木~阿里山間の車窓からも
ほとんど見えません。塔山大尾根の全体を見渡すには、晴れていれば阿里山駅の改札を出たところか、沼平駅付近が好適でしょう。
列車からこの断崖の眺めが素晴らしいのは二万平駅で、不通区間の復旧が待たれます。