ストラクチャーの魅力

      

阿里山林場線の最高橋梁

 定価2900円(税別)

『阿里山森林鉄道1966-1968』の表紙写真(右の画像)は、1967年に阿里山から東へ延びるタタカ線で撮影されたものです。 阿里山から奥地へ向かう資材列車が、タタカ線の最高橋梁を渡っているところ。朝陽は撮影者から見て右後方にあり、 背景の大塔山の山肌をくっきりと照らし出している素晴らしい瞬間です。
 この時ここで撮影された数カットのうち、表紙に使われた元画像は、過去にキネマ旬報『蒸気機関車』1969年春の号 に掲載されたことがあります。しかし、当時の製版・印刷技術の制約もあって、紙面では背景の大塔山の姿が あまり鮮明には表現されていませんでした。
 また、その前のカット(下の画像)は、『鉄道讃歌』に掲載されていますが、やや小さめだったため、 この写真の素晴らしさを十全に味わうことができませんでした。 『阿里山森林鉄道1966-1968』50-51ページでは、背景の山稜のディティールと、そこに浮かぶ橋と列車、貨車に乗っている人のシルエットとの 対比をしっかり見せるだけでなく、まだ朝陽の当たらない寒々とした谷底の橋脚が黒くつぶれてしまうことのないよう 絶妙のトーン調整をした画像を掲載しています。

タタカ線最高橋梁を行く資材列車 『阿里山森林鉄道1966-1968』50-51ページ 1967年 撮影=杉行夫

阿里山の鉄道については、台湾でも日本でも書籍や紹介記事がいろいろ出ていますが、このタタカ線最高橋梁の写真を掲載しているものは けむりプロの作品以外、他に例を知りません。『阿里山森林鉄道1966-1968』では、けむりプロの杉行夫とともに現地を訪れた大野眞一氏の写真、 職員だった劉通喜氏から古橋正三氏が入手した解体時の写真もあわせ9点を掲載しており、美しく壮大なティンバートレッスルの姿と その構造を堪能していただけることとと思います。
 現在、この橋が架かっていた谷は、阿里山から東に向かう台18号線道路から見下ろすことができ、当時と変わらない周囲の景観を 確認することもできます。現状については、当サイトの この記事 をごらんください。
 また、この橋を下る運材列車の写真(本書64-65ページに掲載)は、2023年に台北の国立博物館鉄道部パークで開催された 特別展『臺灣林業鉄道』で、巨大なパネルになって展示されました。

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