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台湾で森林鉄道の特別展が開催中(その3)

台湾で森林鉄道の特別展開催(その3)

台湾の国立博物館 鉄道部パークで開催された特別展『臺灣林業鐵道』は、3つの展示室に分かれています。 最後の展示室は「森林裡的移動風景(森林内の動く風景)」というタイトルが付けられていますが、これは、動画を見せるということと、 時代によって移り変わる風景、という意味をかけているのかもしれません。 ここでは、林業の盛んだった時代の景観、鉄道施設や機材、人々の暮らしや生活道具、 そして現在の景観に至るまでが垣間見れるような工夫がされています。

展示室内にある動画を映写するコーナー 会場の写真はすべて Carrie Kuo 提供

平地にある町から遠く離れた伐採現場では、木を伐る仕事のためだけでなく、働く人たちの生活を支える様々な施設が必要になります。 日本の森林鉄道でも、奥地に行くと、共同で生活する宿舎や、雑貨店、学校などが設けられている例がありましたが、山の険しい台湾では 海抜2000mを遥かに超える高地に、平地とは隔絶した独自の環境が形成されていました。
 また、当時の現場は一般の立ち入りが制限されており、そこに至るまでのルートも厳しい地形を克服するために、スイッチバックやループ線、 何段もの索道などを介していたので、日本の林業地に比べていっそう「山中の小王国」(特別展リーフレットにある表現)といった雰囲気が 強かったと思われます。

これらの地域の様子については、近年、何冊もの書籍が出版されていますが、日本語版があるのは『太平山開発史』のみで、 「四大林場」と称された各地の様子をまとめて知ることのできるものは台湾でも出版されていないようです。 今回の特別展は、阿里山から知られざる東部の森林鉄道まで、貴重な映像と実物資料を概括できるというところが、目新しく かつ意義深いと言えるでしょう。
 左は第3展示室の展示物ですが、陳列ケース左側の写真は、どれもこれまで見たことのない貴重なもの。右側にあるのは、 阿里山鉄道の切符と改札用のハサミなど。このほか、当時使われていた工具や電話機、運転手の携帯していた道具箱など、 関係者から提供された実物が展示されています。

 さて、この展示室にも、けむりプロ撮影の写真が2つ展示されていますが、圧巻は何と言っても最後に登場するこの写真。 南軽出版局『阿里山森林鉄道1966-1968』64-65ページ掲載の、雲海をバックに最高橋梁を渡る運材列車です。

 パネルは一辺が3mほどもある大きなものですが、これだけ拡大しても見劣りしない素晴らしい仕上がりです。 展示の実務を担った方々の熱意と技術のおかげで、当時を知らない若い世代を含む多くの台湾の方々に、 この写真を見ていただけるのは、たいへん嬉しく思います。 なお、この美しい瞬間が記録された経緯については、南軽出版局の『阿里山森林鉄道1966-1968』をお読みください。
 特別展『臺灣林業鉄道』は、2023年10月15日に終了しました。

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