車輌のおもしろさ

      

瑞三の508mmと同型 北五堵の廃車体との出会い

基隆煤鉱のあった五堵の近くに、侯硐(コウドウ)の瑞三礦業508mmと出自を同じくすると思われる機関車がありました。 台北から基隆へ向かう台鉄縦貫線線の、現在は廃止された北五堵駅の近くでその下をくぐる細い軌道があり、元は機関庫だった建物の下に、小さな機関車が置いてあるのが見えます。
 1966年の春、基隆煤鉱の機関車との偶然の出会いについては、増補改訂版『基隆&瑞三炭鉱鉄道』7ページに書かれていますが、 北五堵の機関車との出会いの物語は、その翌日に始まります。基隆から和平島へ向かう台湾金属鉱業で蒸気機関車を見ながらも撮影を禁じられた一行は、昼前には基隆の街に戻り、 どうやって昨夜見た汽車のいる場所に行くか思案。機関庫は高速道路の下にあったことから、路線バスで向かおうとしました。幸いバスの運転手が日本語の分かる人だったので 「汽車のあるところに行きたい」と言うと、途中で「ここだ」と降ろしてくれたのですが、そこは目的地の五堵ではなく北五堵でした。
 通りがかりのトラックに便乗し、なんとか五堵へ辿り着けましたが「あの運転手の言ったことは間違っていたのだろうか?」と気になります。 後日、台鉄の列車の窓から外を見ていた一人が線路と機関庫を目撃。機関車が瑞三と同形だということは後で確認しましたが、当時は動いている蒸機が多数ありましたから、 廃車体の写真は撮らず終いになっていたのです。
 それから5年、基隆の機関車(現在、成田ゆめ牧場にあるもの)を買うため渡台した折、現場を再訪してみると機関庫の屋根は落ち、 近くにディーゼル機関車の廃車体もありました。閉鎖された坑口には「三合煤鉱」というプレートがついており、 炭鉱は数年前まで営業していたのだそうです。
 機関庫の裏にまわって台鉄の列車と一緒に撮影したのが右2枚目、横からが3枚目の写真。煙突とスチームドームの間に砂箱があることをのぞけば、特徴あるキャブ背面のデザイン、アウトサイドフレーム、 コッペル式弁装置、左のサイドタンクが水槽と炭庫を兼ねているところなど、瑞三の508mmゲージ機関車と瓜二つ。
 関心をお持ちの方は、右のサイドビューと、増補改訂版『基隆&瑞三炭鉱鉄道』100-101ページの写真を見比べてみてください。 正面から見たところは、同じく110ページに4輌の写真を並べたものがあります。

 この機関車の話が最初に活字になったのは1966年「鉄道ファン」65号の記事でしたが、実物の写真が世に出たのは実に43年後。瑞三よりも さらに「知られざる機関車」です。

上・中)橋の上は台鉄の線路 1971年 撮影=細井扇郎
下)デザインは瑞三とまったく同じ 1971年 撮影=杉行夫

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