編成や運行のおもしろさ

      

沼尻駅での長大編成の折返し

既刊書で一部が紹介されている興味深いシーンの全貌を探るシリーズ。今回は、スキー客のために臨時に編成された長大列車が、短いデルタ線しかない終点の沼尻駅で どうやって折り返したかを説明します。『軽便鉄道 雪景色』と『RMライブラリー114 日本硫黄沼尻鉄道(下)』(ネコ・パブリッシング刊、以下『RM沼尻鉄道』と略)で計7枚、 撮影者のサイト「夢遊生活の日々」の「セピア色の鉄道写真帖」で6枚が 公開されていますので、それらと見比べながらお楽しみください。
 1967年2月11日、前年に「建国記念の日」が制定され祝日となったこの日は土曜日で、翌12日と連休でした。川桁から沼尻に向かう列車はスキー客で溢れ、その輸送のため後部に二軸客車サハ10と気動車ガソ101を連結。『RM沼尻鉄道』12-13ページで 5枚を使って、大勢のスキー客をさばいた様子が説明されています。途中の会津下館で停車中に撮影されたものが『雪景色』25p下と『RM沼尻鉄道』12p下の写真です。

大勢のスキー客を乗せて沼尻駅に到着した長大編成。左からボハフ11、ボハ6、サハ10、ガソ101 1967年2月 撮影=夢遊仙人

終点の沼尻に到着しスキー客が降りている最中に、ホームと反対側から撮ったのが上の写真。
 ふだんは長くてもボギー客車4輌の編成で、機関車だけをデルタ線を使って川桁方に回して連結すれば折り返せます。しかし、この日は後部に単端ガソ101を連結しているので、機関車だけを回したのでは 機関車の直後にガソが繋がることになり、せっかく推進用に動力車を増やした意味がありません。デルタ線の奥は長さが足りないので、列車ごと転向するわけにもいかない。そこで、ボハ6とサハ10の間の連結を切り、 後部の2輌を置き去りにして、機関車とボギー車だけがデルタ線を回っているのです。
 右上2枚目ではボハ6が最後尾の状態でデルタ線に入っていますが、ホームと直角になっている右の3枚目では、さらにもう1輌見えます。なぜ増えているのか分かりませんが、おそらくこの1輌は この列車につながれていた客車ではなく、デルタ線の末端部に留置してあったのではないかと思います。
 デルタ線を回って、機関車が先頭で本線に出ていくところが右の4枚目。全体がポイントを通り過ぎてからバックして、再びホームに入ってきます。
 置き去りにされたガソ101とサハ102輌に連結するところが、右下5枚目です。こうして、ガソは最後尾ではなく後ろから2番目になり準備完了。
 折返しの列車が停車中に、スキーを履いた子どもが駅の構内にやってきます。その様子が『雪景色』63p写真。 まだ帰りの客で混む時間帯ではありません。やがて、ガラガラの列車は川桁に向けて出発していきました。
 この日撮影されたものは全部で140枚ほど。そのうちこの長大編成列車だけで30カットが残されています。11日一日だけでスキー客を満載した列車が少なくとも3本走ったようですので、 この日に沼尻鉄道を利用してスキー場へ向かった人は、どうやら500人以上いたのではないかと思われます。なお、『雪景色』59p下の写真は2本前、62p下の写真は翌日の別の列車です。

ガソ101の手前に見えている白い柱は、デルタ線の分岐付近で接触事故が起きるのを防ぐための
接触限界票。 5枚すべて1967年2月11日 沼尻駅構内 撮影=夢遊仙人

入口へ戻る  画像倉庫トップへ戻る   「編成や運行のおもしろさ」リストに戻る
   前々回の写真     前回の写真