編成や運行のおもしろさ

      

浦川原の雪捨て列車(ロング・バージョン)

新刊『軽便鉄道 雪景色』の50-51ページでは、頸城鉄道の浦川原駅での除雪作業と近くの川への雪捨て列車を紹介しています。2ページで合成画像を含む4枚。 このときの写真は『RMライブラリー77 頸城鉄道』(ネコ・パブリッシング刊)にも4カット掲載されていますが、どちらも現実の作業を大幅に省略した「短縮版」で、 実際には雪捨て列車は少なくとも3回走っており、写真は全部で70枚以上も撮影されているのです。以下、短縮していない実際の順序を未公表写真で解説しますので、 この2冊をお持ちの方は是非、掲載された写真と見比べながらお楽しみください。

浦川原駅を出て数百mのところに小川にかかる橋がある。その周辺を雪掻きして雪を捨てる作業スペースを作る 1967年1月 撮影=夢遊仙人

雪を積んだ列車を橋のところまで動かしても、そのままでは川面に雪が落とせません。まずは周辺の雪を人海戦術で取り除き、線路上の貨車から雪を投げ捨てられるように しているところが上の写真です。まだ朝陽は雲の陰で顔を見せていませんが、連日の雪がやんだ合間に一気に作業を進めねばなりません。この後、先頭の無蓋車に山のように積まれた雪を橋の上に持って行って落とすのですが、2冊(以下『雪景色』『頸城鉄道』と略)に掲載されているのは、 そのときの様子です。
 空になって戻る列車を、推進する機関車DC123から撮ったのが右の小さいカット1枚目。先頭の貨車は男衆ばかり。女性陣は乗っていないので、歩いて駅に戻ったのかもしれません。

 この列車は駅ホームの奥の方に停車し、そこでホームを埋め尽くしている雪を掻いて積み込みます。 右の2枚目、『雪景色』50p上、『頸城鉄道』30-31pの(凧を持った子どもが写っている)写真は、その作業中に撮影されたものです。
 ひとしきり作業をして無蓋車2輌に雪を積み込んだ列車は、新黒井から到着する混合列車をホーム側に入れるため、側線に移動します(右下の3枚目)。 この頃には雲が切れて朝陽が差し始め、いかにも雪晴れの朝という雰囲気になっています。

 この後、撮影者は、一度線路から離れて駅に入っていくDC92の牽く定期列車を横から撮っています。客車2輌と有蓋車1輌からなる混合列車が到着し、それと入れ代わりに側線から出て橋に向かう 2回目の雪捨て列車を線路脇で撮影。すぐその後を追いかけています。
 右下の4枚目は、最初の作業時ではなく、2度目に小川の橋で雪を捨てているシーン。この間に、浦川原駅では機関車を反対側に付け替え、 折返し出発する準備ができているようですが、すぐに出ていく気配はありません。
 雪捨て列車が再び駅に戻るとき、撮影者は今度は先頭の無蓋車に乗っています(右下5枚目)。このとき後ろを向けば、駅に停車している列車が見えたはず。

 駅に戻った列車は側線に入らず、停車している定期列車の前に停まり、そこでホーム先端の除雪が始まります。2つの列車の間隔はほとんど空いていないので、 まるで定期列車の機関車の前に雪捨て列車が連結されているように見えます(右最下段6枚目)。『頸城鉄道』23p上の写真は、そのときに反対側(空いている側線の方)から 撮影されたものです。その写真の上の方に、屋根の雪おろしをする人が見えていますが、『雪景色』51p写真と見比べると、作業がかなり進んだことも分かります。

 そして3度目に小川の橋に向かうところが、『頸城鉄道』32p中と『雪景色』50p中の写真です(この2つは似ているがこの順に撮られた別カット)。この後のコマは飯室駅で撮られたものなので、 撮影者は定期列車に乗って浦川原を離れたようです。3度目の雪捨てを終えた列車が、また浦川原に引き返したのか、それとも定期列車の前を走って百間町の方へ向かったのかは判明していません。

 写真集のページにレイアウトしたり、こうやってWEB上で紹介する際には、すべてを再現しようとすると冗長になってしまうので、それぞれの絵柄を考慮して 絞り込んでいますが、ここまで触れたものと、ご本人がサイト「夢遊生活の日々」の「セピア色の鉄道写真帖」で 公開しているものをすべて合わせても、全部の記録の3分の1にしかならないのです。
 頸城鉄道に魅せられて多数の記録を残した方は何人もいらっしゃるのですが、これほど密度の濃い記録を残された方は、他に知りません。また、この鉄道の雪捨て列車を 写した写真も、他に見たことがありません。撮影者の夢遊仙人こと梅村さんが、当時どれほどの熱意と関心を持って、これらの対象を追いかけていたのかということが、 よく分かる事実だと思います。

すべて1967年1月7日 浦川原駅周辺 撮影=夢遊仙人

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