ペルス鉄道について
100年前、ブラジルで1つの鉄道が開業しました。延長20数キロという規模ながら20数両の蒸気機関車を有し、1980年代まで長大な列車を走らせていたペルス鉄道(EFPP)です。南軽出版局は、開業100年にあたる2014年夏、2フィート蒸気鉄道シリーズ第3弾「ペルス鉄道1971」を制作しました。
ペルス鉄道をめぐるエピソード その2
EFPPは、その名称に「ペルス-ピラポラ」とうたっているように、開業時にはピラポラという町までの延長を想定していました。ジュケリー河畔に作られたエントロンカメントという駅は「分岐点」という意味で、ここから線路を延ばすことを想定してスイッチバック状になっており、機関車の転向用に三角線(デルタ線)を持っていました。
ところが、1920年代にカジャマールで石灰岩層が発見されペルスにセメント工場がつくられると、鉱石輸送にはエントロンカメントでのスイッチバックが邪魔になります。そこで、エントロンカメントの駅を通過しないで貨物列車を走らせるためにバイパスが作られ、結果としてそこは巨大な三角線になりました。
混合列車と駅が廃止される1970年ごろまでは大小2つの三角線が存在していたようです。転車台を持たないEFPPでは、混合列車はエントロンカメントとカジャマールの2箇所で三角線を使って機関車をつけ替えていました。
17号の走行シーン
1970年代後半に制作された映画"Os Queixadas"からの抜粋。わずか18秒ですが、映画フィルムなので美しいシーンが見られます。この撮影地はカジャマールの西方にあった採石場から下りて来るところで、最後に一瞬見える踏切の向こうにカジャマールのヤードと機関庫があります。
ペルスの機関車 その2
EFPPの17号機はボールドウィン製2-4-0テンダーです。弁装置はワルシャートでアウトサイドフレーム。薪焚きのため煙突はずんぐりした火の粉止めになっていますが、ドーム類はボールドウィンの特徴が良く残されています。キャブはボイラーや動輪に比して明らかに大きく、しかもこの写真の撮影時には前に傾いています。テンダーは2軸。変わった車両の多いナローの鉄道でも、こういうものはなかなか見られません。
「ペルス鉄道1971」には、この機関車のオリジナル(出荷時)の画像も収録していますので、ブラジルに来てどのように改造されたか見比べてみると、実におもしろいものがあります。テンダーも時期によって違っています。まるで、モデラーがジャンク箱から見つけた部品をあてがったような形態の変化。それは、この機関車に限りません。EFPPの特色といえる、機関車の姿の相次ぐ様変わりの様子は、模型製作にも大きなヒントとなるでしょう。