線路の楽しさ

      

助六のリバース線(その2)

鯎川線助六構内の奥につくられたリバース線のことは、以前にもこのサイトで取り上げたことがありますが、今年の新刊 『助六』に掲載するかどうか最後まで迷ったものの一つが、これでした。助六の谷には、鉄道に関する常識を揺るがすような興味深いものがいろいろ見られたのですが、 このリバース線も充分にその資格(笑)があるだろうと思います。

重ねた2枚の写真はほぼ同じ位置から撮られているが、左は崖に身を乗り出しているため高さが少し違う 1975年9月 撮影=井上一郎
上=砂焼き場の屋根から見下ろしたところ 1975年9月 撮影=杉行夫
下=ジョウロで水をまきながら転向する 1975年9月 撮影=井上一郎

上の写真で、水色の線はリバースが作られる以前の線路の概形を示しています。構内図は『助六』57ページをご覧ください。機関庫へ向かう線から左に分岐した線と 外側の線が合流し、機関庫の脇を進んで沢をプレートガーダーで越え、大助六線と春萩越(北川入)線に向かっていたのです。 その線路を撤去し、急カーブの線路を敷くため崖から左に突き出た桟橋にして、かなりきついカントをつけています。機関庫への線路と並ぶところは、 明らかに車両限界を無視して敷設されていますね。
 かつては転向のための施設が大鹿と坊主岩にしかなかったので、助六に来たモーターカーは備え付けの簡易転向装置を使って向きを変えていました。 王滝本線の廃止後に大きめのモーターカーを助六まで走らせる必要が生じて、このリバース線が建設されたのだと思います。
 狭いところに無理やり詰め込んだ感じはあるものの、カーブはなかなかに美しい。そして急カーブで車輪との摩擦が大きいので、ここを大型のモーターカーが通過するには右のように水をまきながらでないと 脱線しやすかったようです。以前に紹介した写真では、同じモーターカーが曲がり切れず人力で押しているシーンがありましたが、右写真の撮影時には水をまくだけで通過できており、 脱線せず通過するためにどのような条件が必要だったのか正確なところは分かっていません。

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