車両の面白さ
阿里山のシェイ18トン機の灰箱
米国で考案されたシェイ式機関車は、普通の蒸気機関車とは大きく違う左右非対称の設計がされています。シリンダーと動力伝達機構をすべて右側にまとめ、重心が偏らないようにボイラーを左に寄せているのです。 (稀に左右が逆になっている例もあるようですが、ほとんどは右にシリンダーが付いています。) 台枠下部中央はトラスロッドが付いているタイプと「魚腹台枠」になっているタイプがあり、左側には複雑な機構がないので、台枠の下に位置する灰箱と、台車が目立ちます。 28トン機の灰箱は『阿里山森林鉄道1966-68』125ページに扉が閉じているところと開いているところの分かる写真がありますが、18トン機の方は拡大写真が載っていないので、今回はそれを取り上げましょう。
石炭焚きの蒸気機関車では、石炭の燃えた後に残る灰を火室から取り除くため、火格子を動かすと左右の動輪の間の灰箱に落とせるようになっています。
しかし、左右非対称のシェイでは火室も左に寄っており、右側はシリンダーとクランク、ボトムブラケットやカップリングリンク(*)などがあるため、灰箱を車体中央に置くことができません。
上の写真のように18トン機の灰箱は左側面に扉が1つ見えていますが、溜まった灰をアシュピットに落とすためには灰箱の底の中央よりにも開口部があるはずで、扉の右にあるレバーを回すと底部の扉が開くようになっているのでしょう。
ライマ社からの出荷時に灰箱側面の扉が付いていない18トン機の写真があります(『阿里山森林鉄道1966-1968』117ページ)。竹崎や奮起湖の構内にはピットが設けられていましたが、他の場所で灰落としをする必要に迫られることもあるので
線路わきに灰を掻き出せるよう側面にも扉を付けたのだと思われます。
実際に側面の扉を開けて灰を掻き出している様子が下の写真です。場所は阿里山を出て10数km、新高口から終点に向かう最後の給水地点。この写真は上方をカットしていますが、そこではもう一人の作業員がコールバンカー上で
水タンクから延びているパイプを操作中。火床整理と給水が終われば、海抜2500mを越える集材地まで再びシェイの奮闘が始まります。
<*>これらの名を持つ機構については『阿里山森林鉄道1966-1968』にある解説をご覧ください。