ストラクチャーの魅力
いまも残っているタタカ線のトンネル
タタカ線は、これまで説明してきたように大部分が2000mを越す稜線のすぐ下を等高線に沿って進むように建設されており、 自忠では鞍部を乗り越しているので、ほとんどトンネルがありません。阿里山を出てから、万歳山の南側に至る区間に、 少なくとも2つのトンネルがあったことが判明していますが、正確な長さ等の情報はつかめていません。 下の写真は、そのうち阿里山に近い方のトンネルから運材列車が出てくるところをとらえた数少ない記録です。
かつての阿里山駅から南へ向かうタタカ線の跡は、現在は沼平から「水山巨木」へと向かう短い「水山線」として整備・復旧されています。 ふだん列車は走っておらず、「水山巨木」の脇で線路は途切れており、その少し先が上の撮影地点だと思われます。1号隧道は 崩落・閉塞しているようで、18号線側にあるはずの反対側の出口も確認できません。
18号線を自忠に向けて走ると、左上写真のように道路際にトンネルの跡が見つかります。これが2号隧道のようで、入口に柵はありますが
内部の様子を観察することは可能で、岩盤を掘りぬいて木の支柱を組んでいた構造が分かります。
阿里山鉄道建設時のトンネルは、この2号隧道と同様、木製で六角形のポータルと支柱を持つものでした。形状や寸法は『阿里山森林鉄道1966-1968』72ページに
「隧道断面定規図」を掲載しているので、そちらをご覧ください。1966年の「けむりプロ」訪問時には、嘉儀から阿里山までの区間で
初期の形状を保っているトンネルはありませんでしたが、北へ向かう塔山線と東へ向かうタタカ線には「定規図」と同じものが残っていました。
塔山線のトンネルは『阿里山森林鉄道』41、42、45ページに、大瀧溪線のトンネルは72ページに写真があります。
なお、塔山線(現在、台湾では眠月線と呼ばれている)のトンネルは、その後にコンクリート巻きされている箇所が多いようで、しかも1999年の地震で崩落した個所があるため
進入禁止となっており、探索・見学はできません。この形のトンネルを見るには、ここで紹介した18号線沿い隧道跡を訪れるのが手軽です。