車輛のおもしろさ

      

林場線仕様の18tシェイ

阿里山に導入されたシェイ式機関車は、18トン機が8輌、28トン機が12輌あるのですが、初期に18トン機1輌が事故廃車になり、 1960年代後半には2シリンダの18トン機7輌(12号~18号)と、3シリンダの28トン機10輌が活躍していました。
 タタカ線、塔山線など阿里山から奥の「林場線」では2シリンダの小型18トン機が使用され、7輌のうち3輌が「林場線」向けの改造をされて いました。『阿里山森林鉄道1966-1968』をお持ちの方は、92-93ページをご覧いただけば一目瞭然ですが、石炭を積む コールバンカーの大きさが平坦線(嘉儀~竹崎)で使用されていたものより大きいのです。

炭庫の高さが原型よりも高く改造されている12号 タタカ線終点 1968年 撮影=杉行夫

 このスタイルの18トン機は3輌あったのですが、『阿里山森林鉄道1966-1968』では12号と 17号の写真しか掲載していません。けむりプロの訪問時、林場線で18号機が動いている姿には出会えず、平坦線で撮影した写真しか無かったことと、 92-93ページでは特定機のディティールをしっかり見せようという意図で写真を選択したためです。

下の写真は初めて公開するものですが、ご覧のように、18号機も12号や17号とは少し形状が違っているものの、 背の高いコールバンカーを持っています。塔山線は14km、タタカ線は20kmの延長があり、急勾配かつ途中に石炭を補給する場所がないので 小さな18トン機のコールバンカーでは容量が不足するため、こうした改造が行われたのでしょう。
 写真から判断する限りでは、けむりプロの訪問時には林場線で12号と17号だけが動いていたようで、詳しい事情は分かっていませんが、 林場線での搬出量が少なく、阿里山機関庫に18トン機3輌を配置する必要性が無かったためではないかと思われます。 また、12号機も平坦線で使用されていた時期があり、後の1971年に訪問された古橋正三さんは、林場線用の2輌が修理中のため タタカ線に16号機が入る姿を見ています。

少し違う形状の炭庫を持つ18号。撮影地は竹崎 1968年 撮影=杉行夫

このように「林場線仕様」といっても、運材量や機関車の調子によって平坦線で使われたり、逆の例もあったようです。
 ところで、この3輌にはコールバンカー以外にも他の18トン機と違うところがあります。前後のライトがありません。林場線は 夜間走行がないので不要な装備ということでしょう。

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