四季おりおりの姿

      

樹の下を行く混合列車(立山砂防)

ポスター(2016年)

第14回(2017年)のポスターは立山砂防軌道の写真でした。そのうち右の元画像は過去に2度、発表されたことがあります。 1回目は『鉄道ファン』128号(1971年12月号)「こっそりひっそりめだたずに 4 立山砂防用軌道」の最終ページ、2度目は 保育社カラーブックス『軽便鉄道』(松本典久・著 1982年)の96ページ。
 デザイナーのKさんも、小学生の頃に見た「こっそりひっそり…」の印象が強く残っていたのだそうですが、 もうこんな軌道は廃止されたと思い込んでいて、大人になってから「まだ現役」と知ったときは衝撃的だったとのこと。
 この写真が撮られた時期に、砂防軌道では酒井工作所と堀川工機の機関車が使用され、入換には加藤製も使われていましたが、この列車の先頭は そのどれでもありません。実は建設省の立山砂防工事事務所の列車ではないのです。

1971年夏。撮影に赴いた2人は、前日に列車で終点まで往復した折に最も見ごたえがあった場所に散ろうと相談しました。1つはグス谷から樺平の18段スイッチバック。 そこまでは10㎞あり途中に長いトンネルもあるため、1番列車に乗って入るしかありません。もう1つは天鳥から桑谷にかけて、オーバーハングのある断崖。 こちらは5㎞ほどで、歩いていけば1番列車を撮ることができそう。列車が通過するのは9時過ぎなので、朝食後に千寿ケ原を出ても間に合います。

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1番列車の後ろから見慣れない機関車がやってきた

撮影者は、まだ陽の当たらない線路をひたすら歩いて、9時には目的地に到着。桑谷のスイッチバックの脇で、断崖絶壁を行く列車を撮れるポイントに陣取りました。 1番列車は通常、貨物が先行し、そのしばらく後に客車(人車)が追うダイヤになっており、この日はレールなどの資材を含む貨物5編成の後から 人車が1編成上がってきました。スイッチバックの多いこの軌道では、貨車は4輌、人車は3輌までと1編成を短くし、続行の本数を増やさないと輸送力を確保できないのです。
 断崖絶壁を進む列車を続けて撮影し、線路際に戻って待ち受けると、人車の後ろから妙な顔つきの機関車がやってきました(左の画像)。 エンジンルーム先端の形状と、前照灯が上に突き出しているところがSAKAIともKATOとも違う。 前日には営林署の車庫に入っていて動かなかった松岡産業の機関車です。
 この軌道は建設省が敷設・管理しているのですが、当時は治山事業のため富山営林署の列車も走っていたのです。軌間2フィート(610mm)というのは 営林署の軌道としては非常に珍しいものでした。

スイッチバックを上る続行列車を後追いで撮影している最中に、線路わきの大木が逆光に映えて美しく輝いているのが目に入りました。 少し動いて、この樹を入れて撮ってみましたが、スイッチバックを進む列車よりも樹の下を行く列車の方がフォトジェニックだと考えた撮影者は、 最後の2編成は樹を中心に狙うことにしました。

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桑谷スイッチバックを上る続行2列車(左)と営林署の混合列車(右) 1971年7月 桑谷スイッチバック 撮影=かねた一郎

 上左が、砂防工事事務所の人車と、営林署の混合列車が続行でスイッチバックを上る姿。右は、左画像で手前に写っている営林署の列車です。 この当時、砂防事務所の列車は、人車のみ/貨車のみで統一されている編成しか見かけませんでしたが、右の営林署の混合列車は、荷物にシートがかけてある2軸貨車が最後尾に連結されて、 よいアクセントとなっているわけです。

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