四季おりおりの姿

      

雪景色を行くホジ3

頸城鉄道の気動車ホジ3は、その改造履歴と特色ある形態で有名ですが、積雪期に走ることはめったにありませんでした。『軽便鉄道 雪景色』の15ページには ホジ3が雪野原を走っている写真が掲載されています。このページでは越後平野特有の風物である稲架木(はざぎ)の説明をしているので、これが相当に珍しいシーンであることは触れていませんが、過去に発表された雑誌記事や写真集で この車輌が雪の中を走っている写真は、ほとんど紹介されたことがないと思います。

数人の客を乗せて雪の百間町を出発するホジ3。後ろに立ち並んでいるのがイネの乾燥に使われる稲架木 1971年1月 撮影=かねた一郎

廃止が3か月後に迫った1月のある日、夜明け前の百間町にはDB81の牽くホハ5が停まっていました。路線短縮後は輸送量も減り、雪のない季節にはホジ3が走ることが多かったのですが、この車輌は90馬力のエンジンで 1軸駆動なので、降雪時に動けなくなるおそれがあって冬は出番が無かったのでしょう。
 この日は日曜で通学客がおらず、機関車+客車1輌の編成で朝のうちに1-2往復したようです。ところが、曇り空の彼方で陽も高くなったころにディーゼル機関車が機関庫に戻り、 代わりにホジ3が出て行きました(右写真)。交代の理由は聞きそびれてしまいましたが、たぶんDB81に何か不具合があり、雪が降らなければホジ3でも大丈夫、という判断があったのではないかと思います。
 エンジンの回転を上げ、雪を蹴散らしながら出庫していく姿は、なかなか勇壮です。本線は除雪されており、細い排障器しか付いていないホジ3でも問題なく走っていましたが、 一往復して戻ってきたときには、跳ね飛ばした雪が動力台車のあちこちにこびりついていました。
 写真を見直してみると、このあとも雲の多い寒い天気でしたが雪は降らず、単行のホジ3が百間町~飯室間を3-4往復しているようです。

上)雪を蹴散らしながら出庫するるホジ3。(下)雪のこびりついた動力台車
ホハ5を引いたホジ3が飯室に向かう。花ヶ崎~大池 1971年1月 撮影=かねた一郎

午後遅くになって、わずかに陽射しが戻ってきました。乗客も少し増えてきたのか、今度は客車を1輌牽いています。この鉄道はほとんど勾配が無く、雪さえなければ けっこうスピードを出して軽快に走って行きます。
 翌日は朝から雪になって除雪列車も走り、DB81とDC92の2輌が一日働いていて、ホジ3は機関庫の奥にしまわれたまま。動く姿を見ることはありませんでした。

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