今月の写真

「今月の写真」では、南軽出版局関係者が撮影した、軽便の魅力に溢れるシーンを公開します。ここで掲載したものは、翌月には再分類して「軽便の魅力」ページの画像倉庫にしまっていきます。 当面は隔週の更新で、新刊の書籍の見どころや、軽便鉄道の魅力を掘り下げるシリーズを続ける予定です。

『阿里山森林鉄道1966-1968』の再版ができました

阿里山森林鉄道1966-1968

南軽出版局では、好評を得て残部僅少となっていた『阿里山森林鉄道1966-1968』の増刷をいたしました。 2017年に出版した同書については、当サイトで内容紹介をしていなかったのですが、 台湾博物館での展示に5点の写真が使用されたこともあり、この機会に改めて この写真集と、阿里山森林鉄道についての紹介をしています。

 タタカ線の終点を出た運材列車は、来た時のように機関車を付け替えたりせず、シェイが逆向きで先頭に立ったまま阿里山までの20㎞を下っていきます。 自忠まで12kmの区間は尾根の北側に線路が敷かれており、そこを逆向き牽引で下るため、谷側からだとシェイの特徴であるシリンダーまわりが見えません。 自忠で尾根を乗り越してから阿里山までは、谷を反対側に見て進むのですが周囲が開けておらず素晴らしい眺望が得られない。タタカ線の運材を撮影する適地は少ないのです。

左の写真は、機関車のキャブから後方の荷を見たところです。背後に見える尾根を回り込む前には、おそらく彼方に玉山(新高山)方面に続く山並みが見えていたはずです。左手を見れば 深い谷の向こうに大塔山の威容が見えるのですが、列車とそれらの景観を一緒に写し込むのが難しい。キャブの反対側からでは、崖と線路の間にスペースが少なく、列車全体をとらえることができない。
 登ってくるときと異なり、途中の給水地点や新高口で停車して再び発車することもないので、煙を吐く姿も撮ることができません。 左下の2枚目は、下る運材列車に連結されていた客車から前を見て撮ったものと思われますが、高いティンバートレッスルを渡る様子がかろうじて写し込まれているものの、後ろに牽いている巨木が見えていません。
 地形的な制約と、列車が午前中早い時間帯に走り、機関車が逆向きで牽引するという条件があるために、この区間の写真はどうしても、歩いて阿里山まで戻る途中の(列車が写っていない)写真か、列車に乗って撮ったこういう写真が主になってしまうのです。 杉行夫に続いて、古橋正三さん、蔵重信隆さん、臼井茂信さんらがタタカ線の撮影に入っていますが、皆さんタタカ線運材列車の撮影には苦労されたようです。

 我々の知る限り、タタカ線の運材列車の最も良いシーンは『阿里山森林鉄道1966-1968』60-65ページに掲載した3枚です。下の写真がその1枚、最高橋梁の阿里山側から見たところです。 このカットは、杉行夫の案内で大野眞一さんが撮影されたもので、他の写真よりも少し後の時期。下り勾配なので、機関車は薄く煙を吐いているだけですが、なかなか迫力のある姿で、昨年の台湾での展示でも紹介された1枚です。
 その他の2枚は、同じ最高橋梁を渡る列車を、沢を少し下ったところから見上げたものと、雲海をバックにこの橋を渡る列車を山側から見下ろしたもの。いずれも阿里山林場線で記録された最高の瞬間と言えるでしょう。 その素晴らしい姿を味わうには、是非『阿里山森林鉄道1966-1968』をお求めください。

タタカ線の最高橋梁を下る運材列車。『阿里山森林鉄道1966-1968』60-61ページ。大野眞一氏撮影

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