編成や運行のおもしろさ

      

尾小屋の除雪列車(ロータリー車)

『軽便鉄道雪景色』でも紹介した、尾小屋鉄道のロータリー車は、台枠の上に車体が載っておらず幌で覆われているだけという不思議な形をしていました。 「車輌」としての体裁を整えていないので、書類上は保線用の「機械」扱いだったそうですが、大雪でスノープラウを付けた機関車では対応できない 状態になると、本線の除雪に出動していました。ただ、自前で作ったために少々使い勝手が良くないところがあったようです。

1970年代初めに私たちが見たときは、普通のロータリー車のように機関車で推進していくと 吹き溜まりに突っ込んで動けなくなったり、脱線してしまうことが多々ありました。尾小屋の湿った雪が回転する羽根(オーガー)にへばりついたりして、うまく飛ばしにくかったのかもしれません。 廃止間際に撮影された写真では、ロータリーヘッドのすぐ後ろに常時2人の保線区員が乗り込んで走っています。

前部に乗り込んだ保線の職員がスコップで雪を掻き寄せる 金平~沢 1977年 撮影=吉田文哉
上)投雪方向はシュートを倒せば左右どちらも選べるようになっている
下)運転席からは幌の前部が邪魔をして線路が見えない 1977年 撮影=吉田文哉

この2人の役目は、上の写真のようにときおり線路の雪を均してロータリーヘッドに送り込むことだったようですが、前方監視のためにも必要だったと思われます。
 このロータリー車の下回りは、2軸なのにホイールベースが長く、車体の長さは結構あるのです。しかも、幌の枠が前方に向かってぐっと背が高くなっているため、 推している機関車の運転台からは右下の写真のように幌で視界がさえぎられ、線路の状態がほとんど見えません。ロータリーの前部に誰かが乗っていないと、危なくて 走れないでしょう。
エンジンを覆うだけの幌枠をなぜこんな形状にしてしまったのか? もしかすると前部に人が立ったまま走らせることを考えて枠の高さを決めたのかもしれませんが、 前部に座席を設けて座れるようにし、せめて機関車のエンジンルームと同じ高さにそろえておけば、運転席から前が見通せたはず。
 吹雪の時に出動することもあったので、立って監視している2人にとっては、寒くて危険、たいへん過酷な仕事だったと思います。そして、脱線したら、すぐに合図を送って 機関車を停止させなければなりません。

ある程度の積雪があるときは、機関車に2人、ロータリーに2人、最低でも計4人が作業に携わっていたようです。苦労して作った機械の割には、必要な人員が あまり減っていないようですが、脱線などの事態に2人では対処できないので、人手を要するのはやむをえないことだったのかもしれません。

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