人間と鉄道

      

ダージリン駅の風情

グームからバタシア ループを経由し、180mほど下ったところにあるのが標高2077mの終着駅ダージリン。狭い山路をくねくねと辿ってきた道路と線路が 町に入るところに駅があります。世界第3峰のカンチェンジュンガを北に望み、現在では1年に海外から5万人、インド国内から50万人もの観光客が訪れる土地ですが、 住んでいる人も10万人以上。斜面に住居が立ち並び、人口密度は日本の都市部並み。国分寺市や豊中市より少し密度は低いものの、名古屋の千種区や横浜の磯子区、 川口市などよりも混んでいるのです! けむりプロが訪れた1969年の時点でも、駅や道路には常に人があふれています。

駅の奥側から。ホームと屋根、線路のカーブが美しい。1969年。撮影=柳一世

わずかな平地は、この鉄道でいちばん立派な駅、そして道路の反対側にある機関庫で占められています。準備を整えた機関車が次々と出庫したり、何編成もの列車が駅に停まっていたり、 ちょこまかと入換えが行われている様子は、眺めていて飽きることがありません。そして、線路上にたたずんで何をしているのか分からない多数の人々。

ホーム左側には2編成が停車中。中央と右の線では下る列車が準備完了。1969年。撮影=柳一世

ナローゲージの鉄道の魅力はいろいろ挙げられると思いますが、こうした狭い場所にコンパクトに配置された施設や、 人間と鉄道の距離が近いということは、欠かせない要素でしょう。
 しかも、煙を上げている機関車は、19世紀末から1920年代にかけて英国で製造された2軸のサドルタンク機なのです。古い機械のデザインの魅力もさることながら、 それを人手と時間をかけて整備し、大事に使っているということも、小さな鉄道に私たちが強く惹かれる点です。
 右の写真で、ホーム左の線には2編成が到着。右で出発の準備をしている機関車が3輌いて、この後なんと5列車がダンゴ運転で山を下ります。その様子は 『ダージリン・ヒマラヤン鉄道&マテラン登山鉄道』に掲載されています。

ここでは、急勾配・急カーブを小型の機関車で牽引するため長い列車を走らせることができず、乗客が多いと続行運転で対処するしかありません。 1つの閉塞区間には1列車しか入れない大きな鉄道を見慣れた眼には、信じられないような光景が出現するのも、ナローゲージ鉄道ならではの楽しさです。 こうした貴重な記録は、この鉄道を建設した英国のダージリンヒマラヤ鉄道ファンクラブでも高く評価されています。<世界で最も美しいダージリン鉄道の写真集> 南軽出版局のダージリン・ヒマラヤン鉄道&マテラン登山鉄道』を是非ご覧ください。
 なお、現在のバタシア ループなどは当時と景観が大きく変わっていますが、ダージリンの駅は3階建て?だった駅の建物が幅も高さも増えたこと以外は、周囲の地形も線路配置も、ほとんど変わっていないようです。 関心のある方は、サイト「夢遊生活の日々」 2007年の訪問記 2015年の訪問記にある写真と、これらを見比べてみてください。

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