線路の楽しさ
3フィート6インチと2フィート6インチの出会い
かつての奥羽本線の大館駅は、軌間2フィート6インチの小坂鉄道小坂線と、3フィート6インチの小坂鉄道花岡線、国鉄の奥羽本線と花輪線とが交錯する、非常におもしろい線路配置になっていました。
上の図は大館駅の概要を示したもので、実際の線路はもう少し本数が多く複雑な形状をしています。太い線が3フィート6インチ、細い線が2フィート6インチ。小坂鉄道の駅は、軽便鉄道の小坂線と、国鉄と同じ規格の花岡線がそれぞれ別のホームを持っています。西側から延びている3フィート6インチの線と、東からくる2フィート6インチの線路が、互いを挟むようになっており、さらに機関庫には軌間の異なる2本の線路が、1本ずつ逆の側から入っているのです。
この写真は、大館の駅構内で小坂線(2フィート6インチ)の貨車から国鉄の貨車に荷を積み換えているところ。場所は上の図で機関庫の少し右。太い線が行き止まりになっているあたりを機関庫の側から撮ったものです。
左と右の有蓋車では、巾も高さもかなり違いますが、いちばん目立つのは、床(台枠)の高さの差。扉の間に板を渡して積み換えるというのは、ずいぶん大胆なやり方ですが、渡してある板が相当傾いていますね。
右も大館駅構内で、上の写真とは反対を向いて撮られたもの。こちらは無蓋車同士で砕石を積み換えている様子です。左の無蓋車の側板を倒し、その下につっかい棒を入れてありますが、しっかり固定してあるのでしょうか。棒が外れたら怪我人が出そうです。
国鉄と軽便鉄道が接続する駅では、両者の線路の間に積換え用ホームを設けている所も多かったのですが、ここは軌間の異なる線路が同じ平面上にあって並行しているのがおもしろい。
異なる軌間が入り組んだこういう線路配置は、台湾の製糖会社などに例がありますが、60年代に日本に残っていた軽便鉄道の中では、この大館以外には見ることができませんでした。こんなふうに大きさの違う車輌が並んでいる姿は、格別「軽便好き」「ナローファン」の琴線に触れるのではないかと思います。