線路の楽しさ   

  

助六のダブルΩ (木曽森林鉄道うぐい川線)

助六1

 「上松のΩ」は製材所に下りる支線でしたが、森林鉄道の伐採現場には切り倒したばかりの丸太を同じような急カーブを描いて運び出すための「作業軌道」「作業線」がありました。
 固い路盤をつくらず、斜面に丸太を組んでその上にレールを敷き、ときにはスイッチバックやループを何度も重ねていく線路の様子は、鉄道に関する常識をぐらぐらと揺るがすようなところがあります。
 その驚くべき景観の例は、西裕之さんの「木曽谷の森林鉄道」(ネコ・パブリッシング刊)などで堪能できると思いますが、森林鉄道が日本中から消えていった後の時期になって、木曽の山奥に新たにつくられた作業線がありました。大鹿からうぐい川に沿って12キロほどのところで、東側に分岐した軌道は緩斜面に大きな弧を描きながら高度を稼ぎます。
 「助六のダブルΩ」として知られているこの線は、助六谷でウグイ川から分かれる支流・東川沿いに1972年ごろから建設が進められたものです。うぐい川の奥には古くから2本の長い作業線がありましたが、60年代の半ばには使用されなくなったようで、この作業線が末期の搬出の中心を担っていました。
 左の写真は、対岸の山腹からΩの下段を見下したもの。逆に、斜面上部の線路から見たのが下の写真です。降りてきた列車は、橋の手前でヒノキの丸太を積んだ運材台車5車を停め、機関車だけが橋を渡って少し離れた助六の停車場に戻ります。作業線は重い列車を走らせられないので、次に降りてくる列車と繋いで10車程度にして、橋を渡ったうぐい川の本線を下ってゆくのです。

助六2
写真上=うぐい川作業線 1976年 撮影=杉行夫  下=同 1973年10月 撮影=かねた一郎

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