線路の楽しさ
上松のオメガ三態 (木曽森林鉄道)
「Ωループ」「オメガ」という言葉は、モデラーやナロー鉄道が好きな者の間では普通に使われていますが、鉄道現場や海外で使われていた用語ではありません。活字になったのは、キネマ旬報「蒸気機関車」に掲載された「草軽のこと」が最初ですが、もともとは50年ほど前、南軽の現社長である柳一世が見たこの光景から連想して作った言葉です。
場所は木曽森林鉄道の上松東貯木場のすぐ下で、写真左奥で貯木場ヤードから分岐した線路が、ギリシャ文字のΩ(オメガ)の形を描きながら小さな沢を渡り、右奥へと下って行きます。
民家の間を抜けてさらに下った先には製材所が幾つかあり、線路はその一つ一つに分かれて入ります。ここは奥地から運材車を連ねて上松に輸送されてきた丸太を製材所へ運び込むための連絡線だったのです。
2枚目の写真は同じ頃撮影されたものですが、こちらの方が少しだけ時期が早いようで、よく見ると上の写真には無い低い橋脚が2つあります。もしかすると最初の橋はもっと低く、この直前にかさ上げしたのかもしれません。さらに少し後の様子が下の写真で、右岸に護岸工事がされています。そのまた5年ほどあとの姿は、「私が見た木曽森林鉄道」(今井啓輔著・レイルロード刊)収録の写真をご覧ください。
列車が通る姿を想像すると楽しくなりますが、残念なことに走行写真は残されていないようです。
車やバイク愛好者なら「ヘアピンカーブ」と呼ぶでしょうが、これをそう称すると列車が高速で通過していきそうな印象があり、トロッコがゆっくり走る線路には、やはり「Ωループ」がしっくり来ます。また、逆向きのΩが2つ連続するS字状の線路も「Sカーブ」と呼んでは急曲線の感じが出ません。それを指す「ダブルΩ」は、後に木曽ウグイ川線の光景を見た下の世代が使い始めたものです。