車輌のおもしろさ

      

栃尾線のごつい電車


栃尾線の「でこぼこ編成」は以前に田圃の中を行く姿をとりあげましたが、今回はその先頭に立っていた電車モハ209です。

会社名がTTK=栃尾鉄道株式会社の時代。1956年にTDK=栃尾電鉄となり60年の合併でEKK=越後交通となる。1955年 撮影=柳一世
上と反対側デッキ 1972年7月 撮影=山猫軒主人

この電車は自社工場製ですが、外側2軸と内側2軸の駆動方式が違う珍しい存在なので、軽便鉄道のファンだけでなく 電車が好きな人の間でも知られているようです。栃尾線には同じ頃に製造された日立の電気機関車がありましたが、なんとその機関車よりも総出力が大きい。こんな強力な電車を作ったのは、 雪深い越後平野の冬の除雪用と、貨物や混合列車を牽かせるためだったと思われます。
 電車にしてはたいへん「ごつい」外見をしており、前後のデッキ、そこから立ち上がるハシゴとその上の大きなライト、深いRの屋根と、その脇についているベンチレーター。このあたりがモハ209の最も印象的なところでしょう。
 妻面のハシゴの両側に2つ窓がありますが、左側はデッキに出るための扉で窓は開きません。暑い夏には、この扉を開けて走っていたこともあるようです。
 上の写真の時代はクリームと青、1960年ごろに茶色1色となり、70年ごろにはクリームと赤に塗られています。各部の寸法は新井清彦さんの『軽便探訪』(機芸出版社)に掲載されている図面をごらんください。細部は何度か改造されているようで、右や下の写真の時期には運転席の窓に桟がなくなり、デッキ上にあったテールライトは端梁に埋め込まれ、連結器やパンタグラフも交換されています。

 客車を7-8輌牽くことが出来たそうですが、団体客でもない限りそんな大勢のお客は居ないので、普段は客車や荷物車を4-5輌つないだ混合列車を牽いている姿が見られました。 上の写真では、後ろの客車が背の低いホハ10なので格別大きさが目立ちます。冬には、デッキにスノープラウを載せて、いつでも除雪に使えるようにしていました。下の写真では、電車+客車+荷物車を牽いています。後ろのモハ213の方が車体長が1mほど長いのですが、先頭のモハ209の方が背が高くて圧倒的に存在感がありますね。

後部デッキにスノープラウを積んだモハ209。2輌目モハ213はパンタを上げているが、おそらく照明と暖房などの電源を取っているだけでモーターは動かしていないはず。3輌目=気動車・電車を経て客車になったホハ24。最後尾は番号が読み取れないがニフ17のようだ。1973年3月 撮影=山猫軒主人

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