編成や運行のおもしろさ
ひろびろたんぼ2(栃尾のでこぼこ編成)
日本的な軽便の夏の風景といえば、緑の田園をゆく姿が思い浮かびます。まずは、米どころ新潟は越後平野を走るナローの電車、越後交通栃尾線の「ひろびろたんぼ」。
前後にごついデッキの付いた自社工場製のモハ209が、青々とした田圃の中をやってきます。よく見ると、引いている客車は1両目が丸屋根でクリームと緑の2色塗り、2両目がマルーンのダブルルーフ(明かり採り窓は塞がれている)オープンデッキ、3両目が切妻屋根の2色塗り、そして最後尾がマルーンの切妻屋根オープンデッキ、高さも長さも、色も形態も、てんでんバラバラです。変わった車両が多かった軽便鉄道といえども、これだけ不揃いな編成は、なかなか珍しいのではないでしょうか。
もともと蒸気鉄道でガソリンカーも持っていたのが電化され、加えてあちこちの鉄道の中古品を譲り受け自社工場で改造した結果、こんな雑種だらけの鉄道になったというわけです。ここの工場は、客車にモーターを付けたりはずしたり、二軸客車をつないでみたり、台車だけ取換えたり、たいへん工作好きの技術者が揃っていたようで、なかには客車>気動車>電車>客車なんて経歴のものまであります。由来も、草軽だったり小坂だったり、石川鉄道、江ノ電や都電杉並線からきたもの、とさまざま。末期には総括制御化され、みな2色に塗られ車体に広告までつけて走っていた栃尾線ですが、この時代の客車のバラエティは、実に魅力的です。
栃尾線の客車の写真は、地方私鉄 1960年代の回想に、いろいろ紹介されていますので、関心のある方はぜひご覧ください。
タイトルが、なぜ「ひろびろたんぼ<2>」になっているのかというと、もともと「ひろびろたんぼ」は、けむりプロが台湾の基隆炭鉱鉄道の風景に付けた呼び名ですの、そちらが<1>というわけです。そういえば、写真集「基隆」26-27ページの光景と同じく、ここも背景に送電線の鉄塔が建っていますね。
古いネガの中から、このときの栃尾線の写真をデジタル化していると、撮影者も忘れていた「びっくり」のシーンに出会いました。そいつは、こちらのページへどうぞ。