車輌のおもしろさ
頸城の単端ジ1
頸城鉄道には3輌の気動車がいて、ジ1とジ2はバックが出来ない単端式でした。休車状態ながら1961年まで百間町の車庫に残っていたジ1は、なかなかに魅力的なスタイルをしています。しかし、この車輌が走っている写真は鉄道書等に発表されたことが無く、もし見つかれば軽便鉄道愛好家、ナローゲージモデラー、単端好きの間で大騒ぎになるだろう(夢遊仙人・談)とされています。
単端式のレールバスの商品化に最初に成功した丸山車輌は、湯口徹さんの調査によれば35輌を各地の鉄道に販売したそうですが、このジ1は大正15年に製造され頸城鉄道が購入した2輌のうちの片方。戦後にフォードTのエンジンを50馬力のいすず製に換え、木製車体に鋼板を貼り、左側面の後ろにある客室扉を広げています。しかし、ゆるやかにRのついた妻板などは原形のままのようで、後から付けたエンジンカバーとのバランスもよく、木製車体のままなのに妻板が平になっていた九十九里のキハ101~103よりも、オリジナルの秀逸なデザインが残っていたと思います。
右の背面写真は光線の加減でゆるいRがついているのが分かるもの。カビでやや不鮮明ですが、中央部をトリミングした画像なので、レンズによる歪みは出ていないと思います。ちなみに、傾いているのは撮影者のせいではなく線路状態のせい。下の左側面写真は、歪みの出ないように撮影された2枚の画像の合成。背面と側面の画像は、車体高さが同じになるようにしてあります。
よく見ると、RMライブラリー「頸城鉄道」でも指摘されているように、左側の窓のうち前の2枚だけが他の4枚より少し幅が広い。右側は乗務員扉があるため、上の画像で分かるように、扉のすぐ後ろの1枚だけ残りの5枚より大きくなっています。屋根の前部と後部で、少しカーブが違うような気もするので、これらは改造時に手を加えた結果なのかもしれません。
また、前妻の3枚窓上端が、側面の窓上端より少し下がっており、窓高さが小さいようです。前と後の3枚窓の寸法が同じかどうかは、これらの写真からは判断できませんでした。いずれも些細な点ですが、模型化に際して印象把握に利用していただければ幸いです。
なお、竣工図と各部の詳細写真はRMライブラリー「頸城鉄道」に掲載されていますので、より詳しい資料をお探しの方は同書をご覧ください。