人間と鉄道

      

ダージリン鉄道 カルシャン駅の風情

起点から56㎞、標高1482m地点にあるカルシャン駅は、人通りの多い街の真ん中に位置しています。道路とのからみ、線路配置がとても面白い中間駅で、 モデラーにとっては模型心をくすぐられる場所かもしれません。

登ってきた線路は左へ大きく曲がり駅に入る。ダージリンに向かう線路はトラックの見えている右方向 1969年 撮影=柳一世

道路と並走して街中に入ってきた線路は、上写真の中央にみえている標識も信号もない踏切をカーブしながら越え、左へ曲がって駅へと入っていきます。駅名が書かれている左端の建物の続きが旅客ホーム。 正面の大きな貨物ホーム建屋との間に挟まれて3本の線路が延び、そこからさらに分岐する側線にはターンテーブルと給水塔があります。
 撮影地点の後方には本線と並行して3線のヤード、その終端にはトタン張りの2線機関庫。模型のレイアウトに置きたいアイテムが揃っています。 駅から四方に向かう道はどれも急な上りや下り。坂だらけの街で平らな一等地がほとんど鉄道施設で占められていることは、 かつてこの鉄道が地域の輸送を支えていた歴史を物語っているのでしょうか。
 それにしても、写真に見えている人間の多さには少々びっくりします。列車の到着間近でもないのに、駅をうろついている大人たち。トラックや乗用車をよける様子もなく歩いている人。 線路を歩いたり、手すりにもたれて時間をつぶしているらしき子どもたち。なんだか、駅も鉄道も「自分たちのもの」だと言いたげな雰囲気ですが、これこそナローゲージ鉄道ならではの <鉄道と人間との距離の近さ>の良い見本と言えるかもしれません。

住民にとって線路と道路の区別はない? 1969年 撮影=杉行夫

さらに驚くのは、この光景が現在でも変わっていないことです。 サイト「夢遊生活の日々」2007年の訪問記 列車到着の様子や、 カルシャンの街なか、2015年の 再訪時の写真 を見ると、40年50年の時間の流れが、この土地の人々の暮らしに さしたる変化をもたらしていないのでは?という不思議な感慨にとらわれます。
 1969年当時の駅やヤード、機関庫の写真と線路配置は 『ダージリン・ヒマラヤン鉄道&マテラン登山鉄道』36-37ページ をご覧ください。

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