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特別そのた
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郵便車は花形 だって速いんだもの
英米の鉄道で郵便輸送が始まったのは1830年代。米国では1860年代にRailwayMailService(RMS)という機関が設立され、鉄道会社の枠を超えて
規格化された郵便車の運行が始まりました。"mail car""postal car"という呼称もありますが、Railway Post Office(米、略称RPO)、
Travelling Post Office(英、TPO)が正規の名で車輌にもそう書かれています。
「鉄道郵便局」「移動郵便局」と言うと「郵便車」よりも立派な感じがしますね。我国と大きく違うのは、これらの車輌は各駅に停まる運用ではなく
最速の優等列車に組み込まれ、停車しない途中駅で手紙や新聞・雑誌などを入れた郵袋(ゆうたい)を走行中に投げおろし、受け取るシステムが
つくられていた点です。走行中にキャッチする仕組みは、米国では1867年には最初の特許がとられています。
上の動画で、通過駅に設置された"mail hook"(あるいは"mail crane")から列車が郵袋を取り込む様子がわかります。ご覧になるには画面中央のボタンをクリックしてください。
郵便車内部の様子や車輌側のキャッチャーの使い方がわかるのは この動画(約4分)。英国での仕組みは、この
グレート・セントラル鉄道蒸気列車での再現動画(約6分)を参照。
英国の優等列車としては、アイルランド行きの船に接続する"Irish Mail"が1848年から走っており
特に有名だったようで、1930年代の記録(3分)には、終点ウェールズのホリーヘッドで
郵袋を船に積み替えるシーンが出てきます。
米国では1977年まで、英国では1971年まで走行中の郵袋交換が行われていました。郵便局側が管理し資格のある職員が乗る点は我国でも同じでしたが、英米の郵便車が「格上」の印象があるのは
こうした背景があるからで、例えて言うなら「あさかぜ」「さくら」に20系の郵便車が組み込まれ、仕分けをしながら通過駅で郵袋を交換していくようなものでしょう。担当する職員が高いプライドを持ち、郵便車が食堂車や展望車並みの注目を浴びるのも当然だったわけです。
ナローゲージの郵便車
北米ではナローゲージの鉄道でもRPOを保有していたところが多く、デンバー&リオグランデ・ウェスタン鉄道(D&RGW)の有名な"SanJuan"に 組み込まれていたものなどは、客車とお揃いのサイズで見栄えのする立派な車体。北米のモデラーに人気があり、1960年代には日本のメーカーで輸出用模型 が製造されていました。下の写真は左側が郵便、右は荷物の合造車です。
メイン州の2フィート軌間の鉄道にもRPOがあり、珊瑚模型店から模型が発売されていました。これもゲージのわりに大きい車体ですが、 上記RMSの基準に従ってつくられたためだと思われます。珊瑚のHOナロー製品については 最近まとめられた詳しい資料があります。
郵便列車の歌もある!
郵便を運ぶ列車が高速で走る特別なものとみられていたせいか、北米にはその歌も多くあります。ブルーグラスの世界で知られた "Briging in that Georgia Mail"は、「時速90マイル(約140㎞)で走る」蒸気機関車の牽く郵便列車の歌。下はレノ&スマイリーの録音。
「ブルーグラスは馴染みがない」とか「どれも似たように聞こえる」という方は、ぜひこれを試してみてはいかが?
ブルーグラス界随一の"rocker"、リトルフィートからボブ・マーリーまでマンドリンでやってしまう男、サム・ブッシュのライブ動画(6分)。
映像が面白いのでお勧めは、ロイ・エイカフの歌う "Fireball Mail"(歌詞付き)。先頭車両から撮った古いフィルムで、
途中で退避している蒸機牽引の貨物列車を追い抜いたり、対向列車とすれ違ったり。
静止画像ですが郵便車の写真が何枚も出てくる "Mail Train Blues"も良い。
シッピー・ウォレスという女性ブルーズ歌手の録音(1926年)で、バックでコルネットを吹いているのはルイ・アームストロングです。