ストラクチャーの魅力

西大寺鉄道  財田(さいでん)駅の風情

財田1
財田駅で交換する列車。後部デッキに自転車を載せた左のキハ6が西大寺行き、右の単端(番号不明)が後楽園行き。1962年4月 撮影=柳一世

 小さな単端と、デッキに自転車を載せた気動車が交換しています。ナローファンならずとも珍しい車両に目が行くでしょうが、この写真は車両だけでなく駅の風情を味わっていただきたいと思うのです。
 丁寧なつくりのホーム上屋、左奥に見える三角屋根の駅舎、どちらも実に趣があります。右の線路脇にある家も、駅の雰囲気にマッチしていますね。この鉄道ができたのは明治44年ですが、建物がつくられた年代は定かではありません。古いけれども、どことなくモダンな感じもあるところなど、駅舎は大正時代のものかもしれず、誰が設計したのかも気になります。

 列車が行ってしまった後の駅の様子を見てみましょう(下の画像)。軽便にしては、なかなか立派な上屋があります。左に見える貨物ホームは、屋根がたわんでいるものの、つくりはいっそう本格的です。ここは国鉄赤穂線東岡山との乗換駅なので、貨物ホームは国鉄側からの積換え用に使われていたそうです。ホーム上にトラックが2台見えるところを見ると、この時代には西大寺鉄道の貨車ではなく、トラックに積み換えて運ぶ荷物も増えていたのでしょうか。
 軽便鉄道で、本格的な貨物ホームがあったところは、小坂鉄道や沼尻鉄道など鉱山鉄道を除けば、あまり多くありません。 西大寺鉄道といえば、「西大寺会陽」の長く客車を連ねた乗客輸送が有名ですが、開業当時は貨物もかなりの輸送量があったのでしょう。
 春の穏やかな日差しのもと、ホームにたった1両停めてある貨車のたたずまいが、いかにも「軽便」らしく、のんびりとしています。

財田2
財田駅 左手の貨物ホームの向こうに国鉄赤穂線の東岡山駅がある。1962年4月 撮影=柳一世 

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