ストラクチャーの魅力

      

阿里山鉄道 竹崎駅の大木

 阿里山については、昨年に南軽出版局が制作した『阿里山森林鉄道 1966-68』に様々な光景を掲載しましたが、今回は、そこで取り上げ切れなかった竹崎駅の様子を紹介しましょう。

 阿里山森林鉄道竹崎駅 奮起湖方からヤードを見たところ 1966年3月 2枚とも撮影=杉行夫

 「山線」と平坦区間の接点である竹崎では、機関車の付け替えが行なわれたり、貨車の編成が行なわれたりするので、ヤードと機関庫、デルタ線があり、構内に8本もの線路が並んでいます。その広い構内にひときわ目立つ存在が、駅舎の脇にある大木でした。
 線路はほぼ東西に延び、ヤード側が南になるため、この木の影が線路に落ちることはありません。また、北回帰線の近くに位置しているため夏は太陽が頭上にあるのですが、それでも、これほどの大木ですから駅前には心地よい緑陰をもたらしていたことでしょう。

 しかし、嘉義の側から見ると、この木は上の写真ほどには目立たないのです。『阿里山森林鉄道』をお持ちの方は112ページ下の写真を見てください。機関庫やデルタ線の周囲には、やはり背の高い木が何本も植えてあり、背後には独立山へと連なる山なみがあるために、空を背景に1本だけ浮かび上がるようにはならないのです。
 右写真は、上の写真と同じく嘉義の方を向いて少し後退した位置で撮られたものですが、やはり給炭台の脇にある大木が枝を広げているさまが印象的。二股に別れた幹のすぐ右、給炭台の彼方にまっすぐに延びている木が見えますが、それが上の写真の大木です。

 嘉義~竹崎間の開業は、全線の開通より2年早く明治43(1910)年でした。風水害による倒木も多い台湾のことですから、これらの大木がそのときに植えられたものかどうかは分かりません。

 ところで、駅舎と比べると、この大木の高さはちょうど4倍になります。建物が4mあったとすれば樹高は16m。HOスケールだと18cm。レイアウトに置くと存在感は抜群でしょうけれど、目立つだけにデザインも制作も、なかなか難しいかもしれませんね。

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