ストラクチャーの魅力
海の見える駅 (下津井電鉄 琴海)
軽便鉄道で海が見える駅は、あまり多くはありませんでした。根室拓殖鉄道は海辺を走るところがあったようですが、南軽出版局メンバーで見ている者はおらず、残されている資料も少ないので駅から海が見えたかどうかは分かりません。駿遠線の大田浜は海辺の無人駅だったようですが、駅の写真が見つかりません。日鉱佐賀関鉄道も海沿いに走っており、途中駅4箇所で海が見えたらしいのですが、残念ながら手元に写真がありません。なので、児島湾に面した下津井電鉄の琴海(きんかい)駅をとりあげてみましょう。
ここは海から少し高くなったところにあり、周囲が山がちの地形なので、こういうシーンを撮ることができました。瓦屋根の立派な駅舎があり、そこへの坂道を登るにしたがって、児島湾の眺望が広がっていくロケーションが素敵です。改札口を通った乗客は線路を渡って島式ホームに上がり、下り1番線上り2番線に来る電車を、海を眺めながら待ちます。右上の写真を見ると、さらに山側にもホームと側線がありますが、かつては貨物ホームだったのでしょうか。
左上の写真では、線路脇の犬走りに座っている人物が何人か見えます。どうしてこんなところに座っているのでしょう? そのうち手前のポイント付近に座っている女子学生と思しき2人は、下り電車が駅に入ってくる右写真でも、まだ同じ所に座っています。保線をしているらしい人物も見えていますが、1番線に電車が接近しているのに待避しなくて良いのでしょうか?
のんびりした駅ですけれども、建物はしっかりしたつくりです。右写真は上の9年後。交換駅だった琴海が単線の無人駅になった直後に撮られたものですが、駅舎は昔のままのようです。妻面は両側とも板張りですが、ホーム側は漆喰の白壁に大きな窓があり、明るくすっきりした印象があります。
この駅は、なんとこの17年後になって交換設備を復活させたのですが、それから3年で鉄道自体が廃止されてしまいました。いま、線路の跡はサイクリングのできる「風の道」として整備されており、琴海の駅跡から海を眺めることができるそうです。