ストラクチャーの魅力

   

九十九里鉄道 上総片貝(かずさかたかい)駅

 軽便鉄道の駅には、簡素なものから大きなものまで、建物の雰囲気も様々なものがありました。今回とりあげるのは、ちょっと格調の高い駅舎です。

 単端式の気動車が走っていたことで有名な九十九里鉄道は、東金の駅も途中の小さな駅も、いかにも軽便風のそこはかとない「手抜き」感というか、車輌とバランスの取れた「お手軽」な印象ががあるのですが、終点上総片貝の駅舎だけは違います。地方鉄道の駅としては実に整った落ち着きのあるデザイン。つくりも看板も立派、入口脇の電話ボックスとの釣り合いも取れています。
 「真横から見た写真では分からない部分が気になる」というモデラーの方には、ちょっと斜めから見たカットもあるので見ていただきましょう(下の画像)。入口の右のタテ看板の陰には郵便ポストが見えています。白い柵の上の看板はバスの時刻表。駅名の文字も素敵。ちなみにローマ字は「KAZUSA KATAKAI STATION」です。

 九十九里鉄道 上総片貝駅 上の2点 1961年2月 撮影=杉行夫

 構内は下の図のようになっています。ホームに出ると右のほうに車庫が見えます。駅舎のホーム側の様子が分かる写真が手元に無いのですが、廃線後に詳細に観察したものがノーブルジョーカーのサイトにありますので、ぜひご覧ください。
 車庫の右にはターンテーブルがあります。車掌さんが手で押して回していたことや、気動車が周囲の建物にぶつかるので削ったエピソードなどで有名な場所。ここでの転向の様子や東金駅の構内図は、地方私鉄 1960年代の回想 で紹介されています。
 立派な駅舎の正面と、ホームに出たところの「だだっ広い」雑な印象との落差が、この駅の面白いところですね。

 左と上は撮影=細井扇朗
車庫の右手前にあるのは貨車の廃車体 右写真で裸電球が見えるのはホーム上にある便所

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