ストラクチャーの魅力
小坂鉄道 小雪沢の給水タンク
小坂鉄道には、大館機関庫以外にもう一箇所、木の樽の給水タンクがありました。場所は、電化区間と非電化区間の境目である小雪沢付近の線路脇です。
この写真は、最近復刻された『鉄道讃歌』70ページに出ているものと同じですが、その写真では給水タンクがページの境目に跨っているため、少々構造が見にくいかもしれません。今回は、タンクだけに注目してみましょう。
トタン屋根とその下の樽、それを囲む木枠と木造の脚など、基本的な構造は前回ご紹介した大館のタンクと同じようです。ただ、屋根は大館の方が大きく、こちらは電燈もついていません。パイプに藁を巻いてあるのは同じですが、水平に延びてくる管のほかに、まっすぐ下に延びている管があるようです。ここから先は想像ですが、大館より寒いこの場所では、たまに給水するだけならばタンク内に滞留している水が凍ってしまうでしょうから、湧き水を引いてきて一時的に樽に溜め、下に延びる管で排水。つまり凍結防止のため流しっぱなしにしてあるのではないかと思います。もう1本、手前に見える鉄管のようなものは、オーバーフロー用でしょう。
脚部は鋼材が入っておらず、継ぎ足しの跡も見えず、印象はこちらの方がすっきりしています。線路と反対側(右手)にある梯子も良い感じですね。
さて、このタンクには機関車に給水するための吐水口(スパウト)が見当たりません。この時点で既に使用されていなかった可能性もありますが、スパウト部だけを撤去するというのも考えにくい。おそらく、これもパイプ内に水が残っていると凍って使えなくなってしまうという理由で、使用時だけ取り付けるようにしていたのではないでしょうか。
どうやって給水していたか、手がかりになる別の画像があります。下の2枚は、上の写真の場所から橋を渡って少し大館よりにあるヤードで2年後に撮影されたものです。この場所は「小雪沢」という駅だったのですが、撮影時点では駅は廃止されていました。線路際に置いてあるものは改軌工事用の橋梁資材です。給水するときは鉄のパイプと、木でできた樋のようなものを二段・三段と重ねているようです。こうした光景からすると、上のタンクも給水時には木の樽に樋かパイプを接続していたという想像が成り立つと思います。