ストラクチャーの魅力
森林鉄道のターンテーブル
軽便鉄道よりも更に簡素なターンテーブルは、森林鉄道に実例があります。写真は木曽の滝越駅構内にあったもので、機関車ではなくモーターカーの向きを変えるために使われていました。
木曽の森林鉄道では、蒸気時代もディーゼルになってからも、機関車は向きを変えずに使われました。山へ上がっていくときがバックで、下るときが前向き。
蒸気機関車の全盛期には上松にもターンテーブルがあったのですが、末期には機関車の向きは決まっていたので機関車の転向は必要がありませんでした。
転向する必要があるのは、後ろ向きで走るのが不便な、写真のような小型のモーターカーです。
営林署の職員の移動などに使われていたモーターカーは、小型のものは200kgしかないので、3・4人で持ち上げてエイヤっと回せば向きを変えることもできるのですが、さすがに不便だったのでしょう。何箇所かの駅構内に円盤状の鉄板にレールを溶接したらしき簡便なターンテーブルが設置されていました。ピットは無く、下にやはり円形の鉄の台座があり、それをセメントで固定しています。これは上松の工場でつくられたものらしく、同じタイプが飯田営林署の遠山森林鉄道でも使われていました。
車輌が乗り降りする際に板が回転しては困りますので、固定するための簡単な掛け金が左右についています(写真左上)。これは遠山のものも同じです。
田島と大鹿には、かなり立派なもの(写真左中)があったのですが、何のためにつくられたのか不明です。モーターカー以外に転向が必要な車輌といえば、除雪車くらいしか考えられませんが、除雪車が反対向きになっている姿は見たことがありません。
左下は、秋田営林局の仁別森林鉄道にあったもので、いちおうピットがあり、鋼製の短い桁が回転します。おもしろいのは固定の仕方。桁の端をみると、片側のレールだけにパタンと倒せる掛け金が付けてあります。この写真では掛け金は2つ(対角の位置)ですが、手前のレールにも穴が見えているので元は4つだったのかもしれません。
こうした工夫は、各地の森林鉄道それぞれ独自のものがあるようです。青森営林局の大畑森林鉄道では、運材台車の転向用に、鉄のテーブルに四角にレールを付けた直径120cmくらいの小さなものが使われていました。3種類の異なる形態が、『私が見た特殊狭軌軌道 第4巻』(今井啓輔著 レイルロード刊)の末尾で紹介されています。