四季おりおりの姿

      

助六谷の秋

南軽出版局の新刊『助六』では秋の助六の光景がすばらしかったことに触れていますが、当時のカラー写真は付録の折込以外には使用していないので、 言わんとするところが伝わりにくいかもしれません。

Ωの上部の線路から作業線に入る橋を見下ろしたところ 1975年9月 撮影=井上一郎

カラマツ以外の針葉樹は秋に落葉しないので深い緑色、黄色く色づいているのは広葉樹。作業線の周囲に 植林されたヒノキはまだ若い苗木なのであまり目立たず、カラマツは茶色くなります。風雨にさらされた切り株や、 ササの淡い緑色のせいで斜面全体は周辺よりも白っぽく見え、合間にところどころ 生えている灌木の鮮やかな赤が印象的です。
 谷のどこでもこのような色合いになるわけではありません。下の写真左は北川入の廃線跡ですが、あたりの山は植林され、 線路の周囲は一面のササ原になっているため、広葉樹や灌木があまり生えず、黄色や赤の葉が目立たないのです。
 ヒノキの密生した森林が多い助六では、秋が深まっても紅葉が見られないところの方が多く、植林されていない 日当たりの良い伐採跡地で美しい紅葉が見られます。下右は、同じ北川入でも伐採後に放置されていた急斜面で、 左の場所に比べて灌木が育ちやすいことが良く分かると思います。 こうしてみると、作業線のダブルΩのある斜面は線路の形状が素晴らしいことに加え、樹々の色彩の面でもなかなかに 稀有な存在であったといえるのではないでしょうか。

西に向かう支流、北川入を遡上する支線の廃線跡。 2枚とも1973年10月 撮影=かねた一郎

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