四季おりおりの姿

   

飯室(いいむろ)の桜の大木

 米どころ頸城平野を走る頸城鉄道は全線がほぼ平坦で、山間を抜けたり大きな川を渡ったりする場所はありません。しかし、景観は決して単調ではありませんでした。新黒井から百間町までのような広い田圃の中を走る箇所は、そこから先には意外と少なく、沿線には雰囲気の良い木立が随所に見られます。
 集落は雪や風を防ぐために木々で囲まれ、畦には刈り取ったイネを架けて干すための「ハザ木」が立ち並び、いくつかの駅には開業時に植えられたと思われる古木がありました。なかでも、抜群の存在感があったのが飯室駅の桜の大木です。

 頸城鉄道飯室駅 百間町からの除雪列車が吹雪の中、飯室駅に着く 1967年1月 撮影=夢遊仙人

 桜の木が植えてある駅は、他の軽便鉄道にも幾つもありました。頸城鉄道では百間町、明治村、下保倉、浦川原にも桜があります。開業時に植えられたなら、この当時樹齢50年、どの桜もほぼ同じ大きさでした。しかし、この飯室は道路と田圃に挟まれて周囲に樹林が無いために、駅舎の上に広がる枝が特に目立つのです。他の季節の様子もいずれご紹介しようと思いますが、葉を落とした時期にも実に立派な枝ぶりを見せてくれました。実は、駅舎の浦川原方にある木は1本ではなく3本で、そのうち2本は根元近くで太い幹が枝分かれしていたようです。少し離れたところから眺めると、それらが重なって1本の巨木がたくさんの枝を四方に伸ばしているようにも見えるのですね。

左=浦川原方から見た飯室駅。1969年2月 右=雪晴れの飯室駅 1967年2月 2枚とも撮影=夢遊仙人

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