四季おりおりの姿

        

緑の絨毯(春の頸城鉄道)

        

 雪深い頸城野も、4月になればすっかり緑に覆われます。粗起こしの始まる前の田圃にはレンゲの花が咲き、田の一部には水を引いて苗代がつくられています。そして、あまり手入れされていないこの鉄道の線路も、あちこちで「緑のじゅうたん」になるのでした。

 百間町の駅では、ホームの前の線路は除草されていましたが、機関庫前の側線はいちめん緑になっています。高すぎず低すぎない草丈が絶妙で、「緑のじゅうたん」の間にレールが鈍く光り、タンポポの花が黄色のアクセントを添えています。
 どうしてこんなふうになるのかわかりませんが、5月に撮影された写真を見ても、やはり草はそれほど延びておらず、同じような状態です。

 上)頸城鉄道 百間町の側線  下)明治村   2枚とも 1971年4月 撮影=かねた一郎

 他の鉄道ではこんな光景を見たことがないので、おそらくこの土地の草の種類と日当たりや水の具合、そしてあまりバラストの入っていない線路が、ちょうどよいバランスを生み出していたのでしょう。

 桜の花が散った後の明治村の駅構内もホーム前の本線を除いて草が生い茂り、ところどころにシロツメクサやタンポポが小さな群落をつくっています。
 旧いディーゼルカーが一陣の風を巻き起こして走り抜けると、折り返して戻ってくるまで1時間ほどは何も走って来ません。お客も、駅員も居ない田圃の中の小さな駅。廃線2日前の、静かな午後のひとときでした。

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