軽便鉄道の魅力を探る   

         

尾小屋鉄道   金平の秋

 尾小屋鉄道で、全線のほぼ中間にある金平(かねひら)の駅は、ちょっと独特の雰囲気があるところでした。

 この日の新小松行き朝の二番列車はキハ2。右は交換待ちの尾小屋行キハ1、右が新小松方、左が尾小屋方。1971年11月 撮影=山猫軒主人

 写真は44年前の11月初め。新小松行のキハ2がホームに入ってくるところです。右側通行をしていますが、これは朝夕の乗客の多い列車に新小松~金平間だけ客車を増結していて、その客車を金平の留置線に置いていく都合上、新小松からの列車を右側に入れるようにしていたためではないかと思います。
 金平の乗降客は写真のように割と多いのですが、駅の周囲には人家がありません。少し離れた街道沿いに集落があり、発車時刻が近づくと駅に人が寄ってきますが、それ以外の時間帯には閑散としているのです。転轍機のある島式ホーム、腕木式信号機、留置線。駅舎と倉庫、使われなくなった蒸気機関車用の水タンク。軽便鉄道としてはそれなりの規模の駅なのに、まるで田圃の中に突如出現したかのように、あたりに生活の気配が薄いところが珍しい。
 駅のホームに立つと、どちらを向いても背景には小高い山が控えています。山に囲まれた平地が一面の田圃になっていて、その真ん中にぽつんと駅がある。この景観上の特色が、季節ごとの金平の光景を彩ります。ここから観音下にかけて、いくつか田圃の中の駅がありますが、金平のように周囲に人家の見当たらない駅はありません。かつて映画『寅さん』シリーズで、この駅がロケに使われたことがあるのですが、おそらくロケハンをした際にカメラマンが駅の風情を気に入ったのでしょう。
 下の写真は上の4年後で、同じく11月初旬の様子です。左は尾小屋に向かうキハ3。右は朝夕の増結用の客車。上の写真と違ってススキが生い茂っているのは、この4年間に減反で耕作されない田が周囲に増えたためではないかと思います。

後には列車本数が減って金平での交換をやめてしまったため、尾小屋行きがホーム左側に入るようになった。1975年11月 撮影=高田三郎

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