四季おりおりの姿

     

北上山地の春

かぐはしい南の風は
かげろふと青い雲滃を載せて
なだらのくさをすべっていけば
かたくりの花もその葉の斑も燃える

  花巻電鉄鉄道線 花巻グランド~瀬川 1971年3月  撮影=かねた一郎 

 青字で引用したのは、宮沢賢治の「北上産地の春」という詩の一節です。描かれているのは、この写真の季節よりはもう少し緑の濃い、5月頃の山麓の牧草地の光景のようですけれども、雑木林の下ではもうカタクリが芽吹いていそうで、ついこの詩を思い出してしまいます。花巻に生まれた賢治には、花巻電鉄らしき鉄道が登場する詩が何編かありますが、残念ながら岩手軽便鉄道を描いた有名な詩2編(*)ほど魅力的なものは見当たりません。
 併用軌道を走る軌道線の廃止(1969年)後、もう2年半残っていた鉄道線は、あまり人気が高くないようです。末期には車体に広告を付けた電車が多かったことも敬遠された理由かもしれません。しかし、季節と場所を選べば、こんな素敵な光景に出会うこともできました。

* 「岩手軽便鉄道の7月(ジャズ)」「岩手軽便鉄道の1月」で、前者は「春と修羅」第二集、後者は第三集に収められています。

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