四季おりおりの姿
潮騒の路(駿遠線の夏)
田園風景が2回続いたので、海をとりあげましょう。とはいえ、昭和30年代に残っていた軽便鉄道で海沿いを走っていた所というと、静岡鉄道駿遠線と下津井電鉄、日鉱佐賀関の専用鉄道くらいしか思い当たりません。そのうち駿遠線では、砂浜の松林をバックにした写真はわりと残されているものの、こういう雄大な景観をとらえたものは珍しいのではないでしょうか。
このカットは、ネガに相当カビが生えているのですが、それでも防波堤や護岸のない広い浜辺に置いてある小舟、潮風を防ぐために松の木で囲まれた家屋など、当時の海辺の村の雰囲気がよくわかります。列車をよく見ると、自社工場製のディーゼル機関車、鋼製客車、次が荷物合造車、最後は木造オープンデッキという、おもしろい編成。この鉄道にも、栃尾電鉄と同様に熱心なエンジニアが多かったようで、蒸気機関車の下回りを利用して凸型のディーゼル機関車を9両も作り、他社から買った客車をいろいろ改造し、末期にはB-Bの軸配置を持つ箱型のディーゼル機関車まで自力でつくっています。
藤枝から袋井までの60km近い長大な路線のうち、最も海の近くを走っていたのは榛原(はいばら)町から地頭方の間。榛原町や相良には、大きな海水浴場もあり、夏は海水浴客を運ぶ臨時列車もありました。
上の写真も、相良近辺での撮影ではないかと思われますが、撮影地は調査中です。見晴らしの良い丘を見つけたものの、このときは惜しいことに日が翳っていたこともあり、撮影者は翌年の冬に再び、このあたりで太平洋を背景に走る列車をフィルムに収めています。
潮風の駆け抜ける駅に、正面の窓を3枚とも開け放したキハD5が1両だけやってきました(左)。
先頭の荷台にも人が座っています。車内はけっこう混んでいるようです。ホームの子どもたちは、座れるでしょうか。