車両のおもしろさ
デッキつきの気動車(その1) 佐賀関のケコキハ510
軽便鉄道にはユニークな気動車がいろいろ存在していましたが、まずデッキ(荷台)がついている車輌をとりあげましょう。
「関アジ」「関サバ」で有名な大分の佐賀関には、かつて2フィート6インチ(762mm)の軽便鉄道がありました。日豊本線の幸崎から半島の先にある日鉄鉱業の精錬所まで約8kmの専用線は1946年に開業、翌々年に旅客輸送も行なう地方鉄道として認可されました。
開業時は蒸気機関車も走っていましたが、1950年代前半までに廃車となり、その後は旅客輸送にはこの気動車が活躍していました。名前の「ケコキハ」がユニークですが、その由来を語ると大隈鉄道のカホ1形として誕生してからの経歴を長々説明しなければならないので省略。実際は普通の「キハ」です。
名前以外で特徴的なのは、ボギー台車のセンターが車軸の中間の位置にない「偏心台車」であることと、一軸駆動である点。あとは自動連結器を備えていることでしょうか。下は、そうした特徴がよく分かる竣工図です。
形態的には、わりとよくある「日車の軽便ディーゼルカー」ですが、前後に70cmほどの荷台がついているのがポイント。ここに小荷物を積んで走っていたようです。3輌の気動車のうち、ケコキハ510と511には荷台がありますが、512は荷台がありませんでした。
あまり資料が手に入らない日鉱佐賀関鉄道ですが、刊行されたばかりの『私が見た特殊狭軌鉄道』第4巻(今井啓輔著・発行=レイルロード)に、廃止1月前の写真が6点、掲載されています。