車両のおもしろさ

      

奥山線の客車その1

 遠州鉄道奥山線は、25kmほどの区間に電化区間と非電化区間があり、電車と気動車の両方が走っているところが珍しい存在でしたが、この鉄道にはなかなか魅力的な客車群がありました。今回は、そのうちメーカー不明の2輌をとりあげます。

  上=サハ1103 下=サハ1104 1961年7月 撮影=柳一世 

 奥山線の客車は当時10両ほどが使われていましたが、すべて木造でデッキは密閉型。寸法は僅かな差があるものの、ほぼ同じ大きさです。しかし、製造者や履歴がさまざまで、番号も何度か付け替えられており、過去にどんな客車があったのか、いろいろ謎もあるようです。
 上の写真のサハ1103は、唯一のダブルルーフ車で、元は鉄道省(いわゆる国鉄狭軌軽便線)の車輌だったということですが、竣工図でも「製造者不明」「製造年月日不明」。譲渡使用認可は「昭和23年」となっていますが、実際いつこの鉄道にやってきたのかも分かりません。鉄道省時代の元の番号がケコハ480だということから、佐世保軽便線(後の松浦線)で使われていたものと推定されています。全長約9mで、いかにも軽便の客車というスタイルが好ましく感じられます。
 下のサハ1104も、前所有者は鉄道省で同じ形式(ケコハ470)の488号だそうですが、屋根だけでなく窓の数や側板の形状も異なっています。これも製造者・製造年月ともに不明です。写真ではカーテンが見えていますが、この鉄道では電車も客車も、日よけのブラインド(鎧戸)がついていない車輌にカーテンをつけていたようです。

 奥山線の客車は、軽便鉄道に多い「アサガオ型」連結器ではなく簡易自連を持ち、貫通ブレーキ管も備えています。これは、電車や気動車と頻繁に連結・解放をくりかえすために改造されたのだと思われますが、いろいろ手を加えているようなのに、木目も美しく、全体のバランスが整ったシックな印象があります。ハンドブレーキのある側の妻面の左の窓が他と異なっているところもおもしろいですね。

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