車両のおもしろさ
駿遠線の木造客車
オープンデッキのボギー客車に続いて、妻板はあるものの開放型のデッキを持つ「セミオープン」タイプの客車をとりあげていきます。
静岡鉄道駿遠線には実に多種多様な客車が存在していました。総数50両近くのうち木造客車約30輌は、この鉄道の前身である中遠鉄道・藤相鉄道由来のものの他に、仙北鉄道や栃尾鉄道、三重鉄道などからの転入車があり、さらにその前歴をたどると佐世保鉄道だとか南越鉄道だとか短命に終わった軽便鉄道の名が登場します。しかし、これらの客車の大半は自社工場で改造されているようで、大正時代の雰囲気を残しているものは数輌しかありませんでした。
駿遠線の木造客車は、すべて開放型のデッキだったようです。そのうちハ10・11は、なんといっても明かり取り窓とトルペード型ベンチレーターの付いたダブルルーフが目を引きます。窓や妻面のデザインなども、特に変わったところはありませんが、奇をてらわないクラシックなところが魅力といえるでしょう。
同じような屋根を持つ木造車は、これ以外には1輌しかなかったようで、下のハ28がそれです。ハ27とともに三重鉄道から移ってきたのですが、27の方はシングルルーフに改造されてしまったようで、平凡な形態をしていました。
駿遠線の客車が他の鉄道と違っていた点として、日よけのブラインドやカーテンを持つものがあったことがあげられます。これらも自社工場で取り付けたものではないかと思われますが、上のハ28にはブラインドが付いています。窓を開け放ってカーテンをなびかせている夏の姿は実にすがすがしく、潮風の吹きぬけるこの鉄道ならではの光景だという印象があります。