車両のおもしろさ

       

沼尻ボハフの美しい窓枠


 沼尻鉄道にはオープンデッキのボギー客車が5輌ありました。今回は、美しいカーブした窓枠を持つ3輌のうちボハフ1をとりあげます。

  沼尻駅構内 1958年7月 撮影=細井扇朗 

 ボハフ1・2とシボフ3の3輌は1911年(明治44年)に雨宮で製造され、中国鉄道の稲荷山線という延長わずか2.4kmの支線で使われていました。現在の吉備線備中高松駅から、最上稲荷への参拝客を運ぶための鉄道だったそうです。同線が3フィート6インチに改軌され、1938年に沼尻(当時は耶麻軌道)にやってきました。
 3輌のうち、ボハフ1と2はまったく同じ形態をしています。シボフ3という客車は後ほど取り上げますが、元は2・3等合造車だったそうで、やはり美しい弧を描いた窓枠を持っています。このように窓枠上部が弧を描いているものは、明治末から大正初期に製造された関西の私鉄電車や市電などにいくつか例を見ることができますが、軽便鉄道の客車でこのような形のものは非常に珍しいのではないでしょうか。それが原形を保ったまま昭和40年代まで現役であったというところが、ちょっと感動的です。
 上の写真では窓はすべて閉まっていますが、下は窓を全て開けているところで、ガラス上端の水平なラインが無いとかなり印象が変わります。

  (中・下) 落とし込み式の窓を全て開けているところ。左端と左から4番目の窓には日よけの鎧戸が見えている。川桁駅構内 1960年8月 撮影=柳一世 
 

 上の全開状態をななめ横から見た写真を拡大したのが右画像です。窓の上端が内側に引っ込む形に角度が付いている様子が見えます。落とし込み式の窓を固定する最も簡易な方法として、持ち上げて斜めに降ろす仕組み(右の図解)が使われていたわけです。
 末期のボハフ1と2は、窓の外側に長い鋼線の手すり(保護棒?)がついているのですが、この時期はそれがありません。無い方が窓枠のカーブが目立つような気がしますが、どうでしょうか。

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