車両のおもしろさ

       

ダブルルーフ・オープンデッキ・バッファー&リンク


 およそ一世紀前、1913年に開業した下津井軽便鉄道では、戦後まで蒸気機関車やガソリンカーが活躍していました。1949年に電化されて「下津井電鉄」と改称してからも電車が客車を牽いており、総計17両もの客車がありました。
 この写真の客車は、戦後になって赤穂鉄道からやって来たものですが、元をただせば下津井開業の年に日本車両で製造され、両備鉄道に納入されたものです。当時は2等3等合造車だったのが、下津井に来てからは仕切りを取り払っていたようです。写真の側面を見ると、2等側の窓4つと、3等の窓6つに別れているようすが分かりますね。
 17両の客車のうちこれら3輌のみがダブルルーフかつオープンデッキというスタイルでした。前回ご紹介した井笠のものとはまた違ったデザインの手すり、そしてバッファーが印象的です。下津井電鉄では、電車は自連型の簡易連結器を備えていたものの、客貨車は昔ながらのリンク&フック(ねじ式)のままで、1972年の部分廃止までバッファーの付いた貨車が使用されていました。

 電化後しばらくして、電車を新製したり他社から付随車を購入したため、これらの客車は1950年代前半から60年代初頭までにすべて廃車となり、解体されてしまいました。上回りが下津井駅に放置されていたシングルルーフのホハフ2が、その後改めて台車を付けて保存されていますが、デッキの手すりは失われています。現役時代の写真を見ると、ホハフ2もこの写真と同じ形の手すりを持っていたようです。

 上左=シンプルだが整った手すりを持ち、バッファーの目立つ端面(ホハフ30) 上右=ホハフ32 左=ホハフ30

 側面の窓のうち1つだけ大きく見えるものがあるが、これは落とし込み式の窓を開けた状態である。
 下津井の客車で最後まで残っていたホハフ30~32はこの翌年に廃車となった。

 3枚とも 下津井車庫内 1961年3月 撮影=柳一世 

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