車両のおもしろさ

       

駿遠線の合造車(手荷物合造客車)

上=キハD4+ハニ1 荷物室の扉を開けたまま走っている  1961年 撮影=柳一世 

 軽便鉄道の合造車では、小坂のホニよりも今回とりあげる静岡鉄道駿遠線のハニの方が知られているかもしれません。客室側、荷物室側のどちらの妻もゆるやかにカーブしており、丸屋根との境目の線など、実に優雅な印象です。窓の大きさと並び具合、荷物室とのバランスもよく、駿遠線の雑多な車両のなかではデザイン面で群を抜いてすばらしいものです。

 ハニ1・2は静岡鉄道の前身である中遠鉄道が名古屋のメーカーに発注したものです。荷物室側の妻には窓がなく、ここは画竜点睛を欠く感があるといえましょう。客室側はデッキと客室が完全に仕切られ、このデッキ部にハンドブレーキがあり、一時ホハニフという名が付けられていた時期もあるようです。色は青とクリーム。新井清彦さんの『軽便探訪』に図面とカラー写真も載っています。
 基本的な寸法はハニ1・2とも同じですが、細部にはいくつか違いがみられます。ハニ1は荷物室扉が両開きで、そのため扉が荷物室中央にありますが、ハニ2の方は片開きで扉の位置は客室寄り。その扉上部の窓の数も4つと3つ。客室側妻面にある3枚窓を見るとハニ1は桟があり、ハニ2は桟がありません。デッキ開口部上端のカーブも微妙に違っています。また、木造車ですがハニ2の方は客室部の側板に鋼板が張られていました。

 上の写真は夏ですので、積荷の温度を考えて扉を開け放っているのかもしれません。左の写真は冬で、海側の荷物扉は閉まっていますが、反対側は開いているようです。通勤通学客の多かった駿遠線では、混雑時に乗客が荷物室に乗ることもあったとか。いずれにしても、現在の厳しい安全管理からは想像もつかない、軽便鉄道ならではの光景ですね。

 中:左下の尾灯以外は何もないハニ2の妻面  下:キハD15に牽かれるハニ2 1962年 撮影=柳一世

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