車両のおもしろさ
日車の単端 (井笠鉄道ジ5とジ1改造客車)
「単端」の製造台数で抜きん出ているのは、丸山車両の35両とならんで日本車両製造の41両。「日車」の呼称で知られるこの会社は、今は新幹線車両などを手がける大手車両メーカーですが、昭和の初めにはこんな超小型レールバスを作っていたこともあるのです。
定員わずか20名前後という小さな車体と、「ひょっとこ」の口や犬の鼻のように突き出たボンネットが印象的です。
丸山の単端は、1960年代初頭まで九十九里鉄道と頸城鉄道に残っていました。ところが、日車の単端は根室拓殖鉄道と井笠鉄道で動いていたものが1950年代後半までに廃車となり、あまり記録が残されていません。
左の写真は、廃車になった後も車庫内に残されていた井笠のジ5ですが、残念ながら保存はされませんでした。
実は、日車が最初に製造した単端は、井笠鉄道に納入されたジ1でした。バスのような使い方を想定していたらしく、湯口徹さんの調査によると、軽量化を極限まで進めるため窓にはガラスでなくセルロイドがはめられ、連結器を持っていなかった等々、ビックリするような話があります。
そのジ1は戦前にエンジンをはずして客車となり、1960年代半ばまで現役でした。下の写真のハ15という客車が、それです。元祖「超軽量車両」だけあって、入換えをするにも駅員さんが引っ張れば大丈夫。
2012年の軽便鉄道模型祭プレイベントでは、高井薫平さんが本邦最初の単端の模型化例として「なめとこ軌道」の車両を紹介されましたが、そのプロトタイプも日車です。この日車タイプは、やはり客車や貨車を牽かせたりせず、単独で軽快に走っている姿が似合いますね。
なお、イベントでの高井薫平さんと湯口徹さんの講演は「軽便讃歌Ⅲ」に収録、ジ1のカタログ写真も掲載されています。