車両のおもしろさ

  

頸城鉄道 コッペル2号機の記念運転

コッペル走行
新黒井から浦川原へ向かう列車。鵜の木付近。1966年5月12日 撮影=杉行夫

 百間町の機関庫に置いてあったコッペルのことは、少し前にも雪の中の姿をとりあげましたが、今回は正真正銘、走っている姿です。
 ボイラ検査の期限を機に廃車となることが決まり、特別にファン向けの運転をすることになった1966年の5月。この日は、雲ひとつない晴天に恵まれました。はるかな山並みは、まだ雪に覆われています。荒起こしの始まる前の田圃はまだ乾いた褐色ですが、あぜ道はもう緑に萌え、用水路は雪解け水をいっぱいに湛えていました。
 コッペルの牽く列車は、新黒井と浦川原との間を一往復します。この日、訪れたほとんどの鉄道ファンは、この特別列車に乗っていましたが、あえて列車に乗らずに、百間町~明治村の周辺で一日を過ごしていた2人が居ました。乗ってしまったら、この機関車が美しい田園を走る光景を撮ることは二度とできないからです。

 往きの列車が通過してから2時間あまり。ようやく明治村に戻ってきた列車(下の画像)は、ホームに到着後、いったんバックして側線に入ります。側線は、「緑のじゅうたん」になっています。ここで列車はしばらく休息し、後続の列車をやり過ごし、もう一本の列車と交換。やがて、客車から切り離された2号機は、サクラの大木の下にある、ふだん使われていない転車台に乗りました。『鉄道讃歌』の冒頭、RMライブラリー『頸城鉄道』の表紙を飾った、美しい写真が撮影されたのは、このしばらく後のことです。

 この日2人が撮影した写真は『鉄道讃歌』に5カット、RMライブラリー『頸城鉄道』に4カットが掲載された以外、最近まで公にされることがありませんでした。梅村正明さんのサイト『夢遊生活の日々』に続々公開されている写真を見て、驚いている方もいらっしゃるでしょう。
 実は、まだ良い写真が残っているようで、当サイトでも、もう少しご紹介しようかと考えています。

明治村
浦川原から戻ってきた特別列車は側線で停車。後続のホジ3が追い抜いていく。緑あふれる美しい明治村の構内 1966年5月12日 撮影=杉行夫

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