車両のおもしろさ
頸城鉄道百間町 コッペル2号機が煙を吐いた
1961年12月のこと。冬休みに東北地方の撮影旅行をしていた10代の若者2人が、旅の最後に頸城鉄道に立ち寄りました。この頃は、まだコッペルの2号機が休車扱いで、除雪用に動く可能性もある状態だったので、その機関車を見に行こうとしたのです。
頸城鉄道の百間町には、延長15kmの鉄道にしては、かなり立派な車庫がありました。いま「くびき野レールパーク」として車両が保存されている建物の右に、工場を持つ木造の機関庫もあったのです。
降りしきる雪の中、はるばる「機関車の写真を撮りに来た」という高校生にほだされたのか、機関区の責任者のNさんという方が、ホジ3を使って2号機を外に引っ張り出してくれました。そのうえ、「煙を出してやる」というのです。
ぼろ布に灯油を染みこませたものを煙室に放り込んで火をつけ、しばらくすると油煙が細い煙突の先からたなびき始めました。まるで、雪の中で出発を待っている姿のようです。問題は、冷たいボイラーに牡丹雪が積もりはじめたことで、これでは、せっかく煙を出している写真をとっても、カマに火が入っていないことがバレてしまいます。
2人は、いっしょうけんめいボイラーやスチームドーム、砂箱やランボードの雪を取り除き、周囲を動き回って十数枚の写真を撮りました。努力のかいあって、帰京後に写真をみせた仲間や先輩たちからは、「どうしてこんな写真が撮れたのか」と驚きの声があがったのだそうです。
のちに「けむりプロ」のメンバーとして活躍する2人の、若き日の小さな悪戯のお話でした。