車両のおもしろさ
鬮(くじ)場の緑に塗られたコッペル
井笠鉄道は、国鉄笠岡駅から1つ目の鬮場駅に車庫を持っていました。ここは木造の機関庫が良い雰囲気をかもし出しているだけでなく、他の軽便では味わえない楽しみもありました。廃止直前まで、廃車になった2両のコッペル製蒸気機関車や、古いディーゼルカーを解体せず、機関庫内に置いてあったのです。
当時、ナローの蒸気は尾小屋の5号(立山製)が残っているだけで、頚城の2号機も百間町から新黒井の本社前に移して保存されていましたから、廃車体とはいえ機関区で古くて格好良い蒸機が見られるのは、この鬮場しかなかったのです。
上の写真のように、夜になると昼間活躍していた新鋭のホジ1やホジ100がねぐらに帰ってきます。けれども、その後ろには何があるのかな?と覗いてみれば、錆びたコッペルやまだ動ける梅鉢のホジ7~9がひっそりと眠っているのでした。
1971年3月31日の廃止に際して、「さよなら列車」に使用するため、コッペルの1号機は美しく塗り直されました。いったんはキャブとサイドタンク、シリンダを緑にしたものの、何故か再び黒に塗り替えられています。のちに西武山口線で活躍し有名になった機関車ですが、この緑色の姿に出会った幸運な鉄道ファンは、あまり多くないと思います。
廃止後も車両が置いてあった鬮場車庫は、1980年の冬に放火され、梅鉢製の2両のディーゼルカーも焼けてしまい、この端正な庫の姿も永遠に失われてしまいました。