特別その他  

 

  機関車に火鉢!

 今度は沼尻鉄道の暖房の話です。この鉄道は、雪国であるにもかかわらず、車輌に暖房装置というものを備えていませんでした。
 左の写真はDC12のキャブ内。なんと、床に火鉢が置いてあります。右は木造のボハフ2。これも床に長い火鉢が置いてあるのが見えます。こういう光景は、軽便鉄道でもなかなか出会うことができませんでした。

  上左=DC12の運転室 1967年2月  上右=客車の床に置いてあるのも火鉢 1967年1月 撮影=梅村正明 

 軽便鉄道の車両の暖房設備については、ほとんど情報が無く不明な点が多いのですが、前回紹介した頸城鉄道のような例を除き、客車内には暖房装置を持っていなかった鉄道が大半だったと思われます。明治末から大正期に開業した軽便鉄道の多くは、初めは蒸気機関車が活躍していました。機関車の運転室が密閉されておらず吹きさらしの状態ですから、客車は寒風が吹き込まないようになっていれば、それで十分に上等だとされていたのでしょう。木造客車の場合は、防災上の観点からも熱源を持たないようにしていたのかもしれません。また、混合列車が多く、小さな機関車の多い軽便鉄道では、列車に蒸気暖房を通すことが難しい事情もあったと考えられます。
 昭和に入ってから製造されたディーゼル機関車も、多くは暖房が無かったようです。前照灯や室内灯用の発電機は持っているので、ヒーターを付けることは可能だったと思いますが、車体が小さくスペースに余裕が無いことも、暖房を備えていない理由の1つでしょう。

 それにしても、軽油で動いているDC12の運転室で火鉢が使われているというのは、軽便鉄道でなければ考えられない光景です。木造客車の床に火鉢を置く、という大胆な発想も、他の鉄道での例は知られていません。こういうことをしていたのは、乗客の乗り込む前とか、すいている時間帯だけなのかもしれませんが。


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